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魔獣物語  作者: ひよく
第1章
28/155

第1章13

 ダンの左手が、スッと淡い光を放った。

 それを自分の額のあたりに持っていくと、自分で出した火炎魔法で僅かに焦げた前髪が、元の通りに再生した。回復魔法である。

 ダンは念のために、ちらりとカナの様子も確認したが、回復魔法の必要はなさそうだ。かすり傷ひとつない。


「ダン…あんた賢者だったのか!?」

 しばらくの間、呆然と立ち尽くしていたオルソが、やっとの事で、声をあげた。

 ‘賢者’とは、魔術師の尊称である。魔術師は一般的に‘賢者様’と呼ばれるのだ。

「‘俺は戦士だ。魔術師じゃない。’なんて、一言も言った覚えはないがな。」

 ダンは、あっさりと答えた。


 しかし、オルソが驚くのも無理はない。

 なんと言っても、魔術師はごく少数なのである。

 しかも、ほとんどすべての魔術師は、誰がどう見ても魔術師だとわかる格好をしている。

 古代語が縫いこまれた賢者のロープに、魔法力を集中させるための宝玉が埋め込まれた賢者の杖。

 魔術師は自らを‘賢者’と称し、戦士は野蛮な人間、自分達が使役する人間と蔑んでいるから、魔術師が自ら戦士のような格好をする事など、まずあり得ない。

 ましてや魔術師が剣を振るうなど、考えられないのだ。


「なんで賢者が、そんな恰好してんだよ!?」

 ダンは一見、戦士のような恰好をしている。


 その理由は簡単で、賢者のロープは、高価なばかりで歩きにくいからである。だから、わざわざ着ようとは思わない。

 また、ダンは魔法力を集中させる賢者の杖がなくとも、自分の掌や指先、やろうと思えば爪先や額にだって、魔法力を集中させる事ができる。別に賢者の杖など必要ないのだ。

 そもそもダンは、たかが魔法ができるくらいで‘賢者様’とは馬鹿らしいという考え方の持ち主だ。‘賢者’と呼ばれるのは嫌いなので、自分から魔術師だとわかる格好は、あまりしたくない。


「珍しい魔術師だろ、コイツ。」

 カナはおかしそうに、ダンを指さした。

「珍しすぎるだろ。」

 オルソは呻くように言う。

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