第1章10
さらに数時間ほど歩くと、日も暮れてきた。
「カナ。ダン。今夜はこの辺で休もうや。」
オルソはそう宣言し、腰を下ろした。うまい具合に湧水を見つけたのだ。これなら、水の心配をする事なく休める。
しかし、カナもダンも座ろうとはしなかった。
「オルソ。」
ダンが声をかける。
「なんだ?」
「もう1度、契約内容を確認したい。」
「またかよ…。いい加減にしろよ。」
「俺達は‘魔獣に対する用心棒’だったよな?」
「そうだろ。」
「ならば、人間からの攻撃があった場合、俺達はお前を守る義務はあるのか?」
「は?」
どういう意味だろうか?
と、オルソが問おうとした瞬間、カナの剣が一閃した。
地面に、複数の矢が叩き折られて落下する。
「へ!?は!?なんだ!!?」
オルソは慌てて、自らの武器、バトルアックスを構えて立ち上がった。
木々の間に姿を隠していた男達が、次々と姿を現す。
カナとダンは、全く慌てた様子はない。
ダンも抜剣し、右手で剣を握った。
「囲まれているな、カナ。」
「27人だな。」
「ちょうどいい。それなら3で割り切れる。」
「えぇっと、それじゃぁ1人当たり…いくつだ?」
「9人だ。カナ、10人以上斬るなよ!」
27人の男達は、初めに放った矢が1本残らず叩き落された事で、少なからず動揺していたが、自分達が圧倒的多数である事を思い出し、「ウォォォー」という雄叫びとともに、一斉に襲い掛かってきた。