第1章4
カナとダンが故郷を失って10年。
2人は、パスツレラ大陸全土を旅してまわっていた。
10年前のあの日、魔人が放った最後の魔法で、カナは母を失った。その場にいたそれ以外の村人達も、一瞬にして死体と化した。
ダンと、ダンの対抗魔法により、魔人の魔法が無効化されたカナだけが助かった。
その後、あまりのショックに失神してしまったカナを残し、ダンは1人で村に戻ってみた。すると、村の男達も皆殺しにされていた。
その中には、カナの父ザガスの亡骸もあった。
だが、ダンの父カルノンの亡骸は、いくら探しても見つからなかった。おそらくは肉片すら残らぬほどバラバラに吹き飛ばされたのだろう。そう結論付けた。残された遺体の損傷は、どれもあまりに酷かったからである。
しかし、ザガスの亡骸には、違和感を抱いた。ザガスは、自らの剣で喉を切り裂いたように見えたからである。自害だったのというのだろうか?一体、何のために?
そもそも、何故、辺境の小さな村が突然、魔獣の大群に襲われたのか?
謎はいくつも残ったが、それらを解くすべはなく、2人は当てのない旅に出た。
誰もいなくなった村に残っていても、仕方がなかったのだ。