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第5章6
しかし、ダンは冷静だった。
激昂しているカナだが、その顔色は紅潮するどころか青白く、少々貧血気味のようだ。
ダンは頭の中で日付を計算した。
(そうか。そう言えば、そろそろだな。)
ダンは左の拳で、カナの腹部を軽く小突いた。
すると、その瞬間にカナの腹痛はすぅっと引いた。
「よ、余計な事するな!」
回復魔法をかけてもらったというのに、カナは更に怒り出した。
「感づかれたくなければ、そういう風に振舞え。ここまでわかりやすければ、一緒にいて気付かん方がおかしい。」
そう言われたカナは、返す言葉はなく、「ふん!」と言ってダンを離し、再び食事へと神経を向け直した。
鈍いナトリウムはそれでもわからず、目をパチクリさせている。
これは病気ではないので、回復魔法では完全には治せない。
それによる痛みの緩和くらいがせいぜいで、それ以上どうにかしようとしてしまうと、ホルモンバランスが乱れて、かえって身体に悪いのだ。
そのため、この時期のカナは、不機嫌さ3割増、戦闘力3割減となってしまうのだった。