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第5章1
あのパイオメトラの塔での戦いから戻ってきてからも、カナとダンはレプトスピラに滞在していた。
「レプトスピラで、また何かが起こる。」
ダンがそう予想していたからだ。
カナはナトリウムに、ダンはコカリ姫にそれぞれ修行をつけながら、その‘何か’が起こるのを待っていた。
そんなある日の事。
ダンの姿は、王城の中庭にあった。
久々に、ナトリウムとコカリ姫の身体を休ませるため、昨日、2人の修行は休みにすると決めたのである。
カナとダンにとっても、久々の休日であった。
ダンは、この王城の中庭を気に入っていた。
レプトスピラ王族の趣味の良さが、よく表れている。
ゴテゴテした飾りはないが、自然と蝶や小鳥達が集まる環境になっており、季節の花々が咲き、中央には清らかな水を湛える噴水があった。
ダンはその噴水の縁に腰を掛け、書物を開いていた。
古びた手書きの書物である。
ダンはそれを1ページ1ページ慈しむように眺めていた。