第4章27
魔人たちを倒すと、不思議な事に塔の瘴気は晴れた。
カナやダン達4人は、村へは戻らず、王都への道の途中の岸辺に船をつけてもらった。
「皆様には本来厚くお礼しなければならないのは、重々承知しています。ですが、今、皆様は村には立ち入らないほうが良いでしょう。こちらから、そのまま王都にお戻りください。」
そうして4人は連れ立って、王都に戻ったのである。
ここは謁見の間。
ナトリウム達は、王妃と王に事の顛末を報告した。
「後味の悪い戦いになったようじゃの。辛い役目、大儀であった。」
王妃は4人を労った。
「しかし、それだけの数の人間の魔人化など、今まで聞いた事がない。クロストリジウムの件もそうだが、今、このパスツレラ大陸では何かが起こっているのかもしれんの。」
それに対して、ダンが口を開いた。
「もしかすると、この一件もクロストリジウムの一件も、関連があるのかもしれません。それに、私はずっと気になっていた事があるのです。」
「なんじゃ?」
「私とカナは、10年前に魔獣に襲われ壊滅したラブド村の生き残りです。」
意外な告白に、カナはダンのほうに向きなおった。
ダンはあまりこの話を他人にしたがらないのである。
「ダン…。」
「いいから黙っていろ、カナ。」
ダンはカナを制した。
ナトリウムも驚いた顔をしている。
「ラブド村が襲われた理由…私達はずっとそれを知りたいと思ってきました。ですが、何の手がかりもなく、10年の月日が流れました。しかし、今になって、このパスツレラ大陸で起こっている事件は、ラブド村の事件に繋がる気がするのです。」
「なんと、ラブド村に生き残りがいたとは驚いた。しかも、それがそなた等だったとはの…。」
「ラブド村は、魔獣に襲われ、そこで私達は初めて魔人と戦いました。最終的には、私とカナしか生き残れませんでした。それ以後、私達は誰もいなくなった村を出て、旅するようになったのです。」
「そうか…。しかし、10年前といえば、お主らも子供だったはず。大変な思いをしてきたのだな。」
「確かに私もカナも苦労はしました。ですが、お互いに1人ではなかったのが、救いでしょう。」
「して、これからお主らはどうする気じゃ?」
「私達をしばらくこのレプトスピラに置いてください。またこの国で何かしらの出来事が起こる気がするのです。」