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第4章26
「ところで、カナ…少し前までこの辺りはひどい雷だったみたいだが、大丈夫だったのか?」
カナとナトリウムの2人きりで旅に出るのにダンが一番心配した事は、カナの雷恐怖症だった。
「大丈夫だった。ナトがいてくれたから。」
カナは、はっきりとそう答えた。
それはダンにとって、一番意外な事だった。
ダンとコカリ姫を連れてきた村人は、魔獣化した者達の遺体を確認した。
それは、ここ最近、海で行方知れずになっていた漁師達のものだった。
その中には、村長セフェムの夫の遺体もあった。
「彼らは全員魔獣化していて、お2人に襲い掛かってきたと言うのですね…。」
「そうだ…。」
「そうであったとしても、僕はお2人を恨まずにはいられません。あの心臓が貫かれた遺体…あれは僕の弟のものです。」
村人は…アモキクリアという名の若者は、そう言って唇を嚙み締めた。
確かに仕方なかった。
しかし、アモキクリアの気持ちを考えると、反論する気にはなれなかった。