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第4章18
1階のコウモリ退治が終わると、カナとナトリウムは、さらに上の階に上って行った。
2,3,4階は、特に魔獣は出なかった。
2人は5階まで上ってきていた。
2人が上ってくると、部屋の隅に蹲る1人の人間の姿が見えた。
低い声でうめき声を発している。
「ナト、私の後ろに下がれ。」
カナは警戒しながらそう命じて、その人影に一歩また一歩と近付いて行った。
カナとその人影との距離が5メートル程になったところで、蹲っていた人影は突然、立ち上がり、カナに襲い掛かった。
カナは予想外の事態に言葉を失ってしまった。
その人影は、海中に消えたパセトシンであったからである。
「パセトシンさん!」
代わりに叫んだのは、ナトリウムだった。
「パセトシン…お前、魔獣化しているのか!?」
うめき声しか上げずに襲い掛かるパセトシンに、カナは呼びかけたが、答えは返ってこなかった。