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第4章16
泳ぐ事、1時間。
2人はパイオメトラの塔の小島に辿り着いた。
カナはまだ体力が残っていたが、ナトリウムは息を切らしていた。
「大丈夫か?ナト。」
「大丈夫です。カナさん。」
ナトリウムはらしくなく、弱音を吐かずにそう答えた。
大丈夫でないと言ったところで、回復魔法をかけてくれる者など、今はいないのだから。
海辺から、パイオメトラの塔はすぐに見えた。
高さはかなりある。
レプトスピラで最も高い建造物は6階建ての王城なのだが、高さだけでいえば、それに匹敵する。
蔦が絡まる不気味な塔である。
不気味さを感じさせるのは、それだけでなく、強い瘴気を発しているからだ。
瘴気をはっきりと感じ取れるのは、魔術師だけなのだが、そうではないカナやナトリウムも、言い様のない不気味さは感じる事ができた。
時刻は昼頃なのだが、空には分厚い雲が広がり、辺りは薄暗かった。