第4章15
シャークの次の狙いはカナである。
「カナさん!」
ナトリウムは悲痛な声を上げたが、カナは全く怯んでいなかった。
むしろ、シャークに向かっていく。
激突の瞬間、突撃してきた勢いを利用し、シャークの左目を串刺しにした。
シャークは突然の反撃に暴れまわる。
そんなシャークの目に剣を突き立てたまま、カナは叫んだ。
「ナト、今だ!右目もやってくれ!」
「は、はい!」
ナトリウムは、渾身の力でシャークの右目に剣を突き立てた。
シャークは大きく仰け反った。
カナはその隙に自身の剣を抜き、シャークの上顎から脳天に届くほど、深く斬り裂いた。
流石にここまでやられては、魔獣化した生物でも生きてはいけない。
シャークは白い腹を見せて、海面に浮かび上がった。
シャークの血で、辺りはまさに血の海と化していた。
シャークは仕留めたが、カナとナトリウムに達成感はなかった。
どこをどう探しても、パセトシンの体は見つからなかったからだ。
「諦めよう、ナト。あれだけの勢いで体当たりされたんだ。多分、即死だったと思う。」
「はい…。」
ナトリウムも、そう思わざるを得なかった。
カナとナトリウムは、転覆した帆船の縁に掴まっていた。
「このままパイオメトラの塔に行こう。ナト、泳ぎ切れるか?」
「はい、何とか…。」
今の位置は、元の漁村よりパイオメトラの塔がある小島のほうが近い。
カナはそのまま小島に乗り込み、残る魔獣を一掃してしまおうと考えた。