第4章14
シャークは、元々ホオジロザメである。
元から代表的な人食いサメの仲間であるが、凶暴性は魔獣化した事により、さらに増している。
しかも、ホオジロザメの平均的な体長がだいたい5~7mというところ、シャークは10m近くの巨体であった。
その巨体をもって、シャークは船に体当たりしてきた。
さすがに堪えきれず、メリメリと音を立てて、船が転覆する。
3人は海に放り出された。
「無事か!?」
泳ぎの達者なパセトシンは、一番に海面に顔を出し、カナとナトリウムの無事を確認しようとした。
パセトシン程ではないが、やはり泳ぎが得意なカナもすぐに海面に上がってきた。
しかし、ナトリウムは一呼吸遅れ、シャークに狙いを付けられていた。
「ナト!」
カナがナトリウムのほうに向かおうとするが、間に合わない。
シャークは巨大な口を開けた。
ナトリウムにも、鋭い歯列がはっきりと目に入った。
「うわぁぁぁぁ!」
ナトリウムは必死の思いで、持っていた剣を滅茶苦茶に振り回した。
それが運良く、本当に運良くシャークの鼻を掠めた。
鼻はサメの急所である。
シャークが一瞬怯み、その隙にパセトシンが銛を放った。
「食らえ!」
その銛は背鰭を掠めた程度だが、シャークの狙いはナトリウムからパセトシンに変わった。
シャークは水中で素早く方向転換し、パセトシンに体当たりを食らわせた。
ホオジロザメの体当たりは、100㎞/hの車がぶつかるのと、同じ衝撃と言われる。
それ以上に、魔獣化したシャークは身体能力が上がっている。
パセトシンの体は、バキっという音をたてて、吹っ飛ばされた。
「パセトシン!」
「パセトシンさん!」
カナとナトリウムは叫んだが、パセトシンはそのまま海中へと沈み、消えて行った。