第4章13
カナとナトリウムは、パセトシンの操る帆船で、沖へと向かった。
「ヒドイもんだな。」
カナはウンザリしたように言った。
船がひどく揺れるのである。
時化ではない。
魔獣化した海中の大小の魚達が、群をなして体当たりしてくるのである。
「船から落ちないように気を付けろ。」
パセトシンはそう2人に注意した。
「あぁ。」
カナは返事をしたが、ナトリウムはあまりの揺れに船酔いして、声すら出ない。
ここまで無事に来られたのは、パセトシンの操船技術のおかげだった。
素人の漕ぐ小舟では、あっという間に転覆していただろう。
突然、船がそれまで以上に激しい揺れ方をした。
波が船内にも押し寄せる。
「来たぞ!」
パセトシンが叫んだ。
カナは立ち上がり、抜剣する。
ナトリウムもフラつきながら、抜剣した。
不気味な黒い影が、船体の下を横切った。
「シャークだ!出やがったぞ!」
パセトシンが再度叫んだその瞬間、いきなりカナが海へと飛び込んだ。
「そこか!」
巨大な魚体めがけて、剣を突き立てる。
だが、水中故か目測を誤り、剣は充分に届かなかった。
「馬鹿野郎、水中でサメに敵うか!一旦、船に上がれ!」
パセトシンは強引にカナを船体に引き上げた。
「カ、カナさん大丈夫ですか!?」
ナトリウムがオロオロしながら、訊いてきた。
「ケガはない!」
カナは短く答える。