第4章10
「ナトリウム様、カナ様、よくぞおいでくださいました。村長のセフェムと申します。」
セフェムは2人に深く頭を下げた。
初老の女性である。
他界した前村長の夫の後を継ぎ、村長を任されているという。
「村長、魔獣はこの辺りにも出現するのか?」
カナが尋ねた。
「村の中まで入ってくる事は稀ですが、海には多数出現します。ここは漁村です。海に出られなければ、村人は食べていけません。私の夫も、数か月前に漁に出たまま帰らぬ人となりました。」
セフェムは息を吐き、俯いて話を続けた。
「魔獣化したサメに襲われたのです。魔獣化しても他の魚はそれ程、脅威にはなりませんでした。しかし、この辺りに元から生息していたと思われる1頭のサメが魔獣化し、海に出る漁師たちを次々と襲い始めたのです。私達はそのサメを‘シャーク’と呼び、恐れています。また、パイオメトラの塔とその小島には、それ以外にも多数の魔獣が巣食っているようです。」
セフェムは、カナとナトリウムの手を取った。
「お願いします!小島の魔獣までとは言いません。どうかシャークだけでも退治してください!」
セフェムは涙声で、2人に訴えた。
「任せてくれ、村長!シャークも他の魔獣も、絶対に倒してみせる!」
カナは元気にそう答えた。
ナトリウムもコクコクと頷いている。
村の窮状を知り、自分も役に立ちたいと思い始めていたのだ。