第3章68
その翌日、被害の全貌が明らかになった。
民間人の死傷者はこそ出なかったが、騎士や兵士は半数近くが死亡し、残りの者もほとんどが傷付いていた。
そして、王と王妃、カナとダンとナトリウムの姿は、城の中にある会議室にあった。
「王女が魔法を使ったと、そう申すのじゃな。」
王妃の問いに、ダンが答えた。
「その通りです。魔法の中で最も難しいと言われる回復魔法をお使いになりました。コカリ姫がいなければ、おそらくカナは助からなかったでしょう。」
王も王妃も驚きの表情を隠せなかった。
「もしそれが本当ならば、王女に魔法の修行を受けさせたい。王女という立場では必要ないかもしれないが、賢者であるとは、それだけで国民の心を掴めるからの。」
そして、王妃はニヤリと笑った。
「ダルノン・キャストスペイよ。今日から、お主が王女の教育係じゃ。」
「え…。」
ダンは頭を抱えた。
そんな気はしていたが、やはりそうきたか…。
「お待ちください。私はレプトスピラの人間ではありません。」
「構わぬ。優秀な人材は、他国からも取り込まなくては。」
「イヤ、あの、私は仕官するつもりはないのです。」
「ならば、1ケ月で良い。この国に滞在して、王女に魔法を教えてほしい。勿論、給金は弾むぞ。」
ダンはがっくりと肩を落とした。そうまで言われては、断り切れない。
それに、今回の事件でレプトスピラは何者かに狙われているという事がわかった。その国の王女が魔法を使えるようになるのは、重要だ。自分の身を自分で守る事ができるだろう。
「わかりました…。1ケ月で出来る限り力を尽くしましょう。」
そう言ったダンに、王妃はさらに笑みを深めた。




