第3章58
ダンは剣の腕も確かだが、熟練の戦士2人がかりでは、さすがに厳しい。その間に、魔術師はダンから距離をとっていた。
「対魔術師戦で、最も有効な魔法を教えてやろう。ほれ!」
敵の魔術師は賢者の杖を振りかざした。
何の魔法だかはわからないが、何らかの魔法をかけられようとしている。それはわかったが、戦士の攻撃に対応するので精一杯だったダンは、自分に対抗魔法をかけるのが遅れた。
敵の魔法はダンに到達した。
(なんだ!?)
敵の魔法力がダンの身体の中を駆け抜けていった。それと同時に、普段、自分の身体の中を血液のように流れている、自分の魔法力が消えていくのがわかる。
「まさか、この魔法は…!?」
ダンは自分の左手に、魔法力を集中させようとした。だが、出来ない。いつもなら息をするように簡単に出来る事なのに、今までどうやって出来ていたのか、わからなくなってしまった。
敵の魔術師はおかしそうに口端を吊り上げた。
「初めて食らう魔法じゃろう?これは儂のオリジナルじゃ。」
魔術師は、ダンと戦っていた戦士2人に手で合図し、自分の傍に戻ってくるように命じた。
「魔法を…封じたのか!?」
ダンは苦々しそうに呟いた。
「対抗魔法のほんの応用じゃ。」
魔術師は、喉の奥から笑い声をあげる。