第3章50
「ナト!お前、何を考えているんだ!」
「カナさんとダン様について行きます!僕は決めたんです!」
「勝手に決めるな!こっちは迷惑だ!」
ダンは散々ナトリウムを翻意させようとしたが、ナトリウムにしては珍しく、頑として譲らなかった。
「いいじゃないか、ダン。私はナトも一緒に連れて行くぞ。」
結局、カナにそう押し切られ、ダンは渋々とそれに従ったのだった。
カナとダンは、宴の準備のため、それぞれ別々の部屋に連れて行かれた。ナトリウムは王城内にある自室に向かった。
さすがに、旅装で宴に出るわけにもいかない。しかし、ダンは自分に与えられた衣裳を見て、溜息をついてしまった。
古代語が縫いこまれた濃い紫の賢者のロープであった。魔術師の正装である。
ダンは魔術師でありながら、今まで賢者のロープを身に纏った事は、ほとんどなかった。‘高価だから’‘歩きにくいから’そして、‘似合わないから’である。
しかし、用意された衣裳を着ないのは、失礼にあたる。仕方なしに、ダンは賢者のロープに着替えたのだった。
カナはカナで、数人の侍女達に囲まれて身支度させられていた。
「なんだ!?この鎧は!きつ過ぎる!」
「鎧ではございません。コルセットです。」
「次は御髪をお結い致します。動かないで下さいまし。」
「ネイルもケア致しましょう。」
こうして、ダンもカナも着慣れない姿に変えられ、宴を迎えたのだった。