08パラレルワールドへ出発
バブル君はいつも通り出社した。今日も会社のPCはバブル君のものだけ不調でグラフィックの色や大きさが勝手に変わったりアプリにバグが発生したり、なかなか仕事は進まなかったが自前のしつこさで何とか納品をしていた。バブル君は完璧主義ではなく、デバイスも出力に関しては高級品と安物が同じ見た目である筈はなく完璧では無かった。ある程度のクオリティを維持し思ったものが8割以上表現出来れば満足だったし金になった。大卒は作品のために仕事をするとバブル君は感じているが、バブル君の様な専門卒は生活費が目的で仕事を取り、作品を作るのが殆どであった。そもそも短い期間で学習するのは手っ取り早く金を稼ぐ為なのである。
バブル君はPCの不良がある事を複数の先輩の偽物に確認したら事実である事が認められた。この変な現象は気の所為や病気では無かったのである。しかしコンシェルジュ役のスタッフに相談すると結構すぐにPCは直ったのであった。何故頻繁にPCが不要になりコンシェルジュで簡単に直るのかバブル君は不思議でならなかったが、現実である事は確かであった。
コロナ禍でリモートワークが実施されていたが、その日は毎日出社している下っ端のバブル君は多くの社員が出社しているのに気がついた。だが同時に時間の流れの異常に気がついたのだった。8時間働いている筈だがバブル君は体感で14時間働いていた。14時間である。この体感14時間の間に社員はどんどん偽物に挿げ変わって行きのんびり作業をしていたが、バブル君だけが、ただ1人14時間もカリカリと作業していたのだ。バブル君の腹時計はかなり正確で時間を測る事が出来、8時間ぐらい働いた後で食事休憩しないとメンタルまでもが疲れてしまうのだった。バブル君に寄れば昼間にパンや握り飯をちょっと齧っただけで10時間以上働くのは体調に悪い…と言うより摂取カロリーを大きく消費カロリーを超えるので非常にナンセンスである。と言うより時計に細工して過労働させる割には残業代が出ない事には不満であった。雇用契約外の詐欺である。
その日は社員達の様子が変である事にバブル君は気がついたのである。下っ端のバブル君は外食はお財布に優しくなく弁当を持ち込んでいたのだ。それが全員にまるで社内に食べ物の持ち込みは禁止である様な奇異な目で見られたのである。だがエネルギーを摂取しなければ労働は厳しい。バブル君は昼休みになると弁当をモリモリ食べたが、やはり社員一同で奇異の目見られたのであった。
しばらくすると社員達も昼ご飯を何処からか持ち込んで食べるのである。バブル君はギョッとした。隣の席の社員はお昼ご飯に生卵を持参していたのだが5個ほど食べたのであった。バブル君は卵は多くても1日1個までと躾けられて育ったが体調が悪くならないかとマジマジと見ていた。筋力をつける為のタンパク質を摂取するにしても多すぎる。見ていたのは食べ方であった。豪快であったがとても嬉しそうに大事に食べていた。まるで卵が超高級品でとても美味しいご馳走の様な食べ方であった。例えるなら世界最大珍味を食べるレベルの満足の仕方であった。他の社員は買い弁をしていたがどのオカズをどんな順番でどの様に食べるか迷いながら食べている者が多い様に見えた。バブル君は内心動揺した。『まるで食べ物が元々無い世界から来た様なそんな感じだ…でも食べないでも生きられるとしたら太古からの飢餓と言う不幸や苦しみを克服した事になる。これが本当なら幸せの筈なのに食べ物を求めているのは何故なんだ?』問うには非常に気まずい質問であったためにこの疑問はこの時点ではここで終わった。
ポンっと妙な音がして軽い地震が長めの時間で発生した。勤め先のビルが縦揺れを起こしたのだ。バブル君の第六感は強くなった。何故か飛行機の離陸の雰囲気の空気を感じたのだ。何故か分からなかったが空間ごと星を発ったのだとバブル君は感じた。8時間と言う14時間近い労働でバブル君の意識は星の彼方のさらに先に飛びそうだったが、何も理解していないバブル君に先輩の偽物は慌てた様子で一言だけ『今はドーム上の世界にいる』と教えた。ドームは屋根のある大きな半球の建物のことだ。だがバブル君はヘッポコであったが常識人だったので理解はしたが現実として受け入れなかった。定時の時間になるとバブル君は喜んで会社のビルを出て駅に向かったのであった。
都心の駅に向かう途中で妙なものを見たが目が悪かった為、バブル君は目の錯覚だと思っていた。バブル君の周りの景色は令和であったが少し遠くは昭和の終わり頃の様な見た目であった。フェードインとフェードアウトを繰り返して昭和の風景はふんわりと令和に変わって行ったのであった。『都市をアップデートしているのだ』悪徳霊能力者の使役霊だと思われたが無能なバブル君には姿は認識出来なかった。もしこの話が本当なら宇宙人は地球型の住処を所有していて定期的に地球へ行き往復をしてアップデートを繰り返している事になる。バブル君は家に帰る為に電車に乗った。




