06無力な国家警察
これはバブル君がスマホの異常を察知して警察署に相談に行った話だ。以前、バブル君はニュースと警察のホームページで副都心の警察署にサイバー犯罪専門の管轄が出来た事を知っていた。無力な国民は税金は納めているので、まずは犯罪に関与しそうな異常があれば警察に相談するのが特権である。バブル君も脱税するほど賢くはないので特権はあり、副都心の警察署に仕事を早退してまで駆け込んだ。それほどにバブル君はスマホに異常を感じたのだ。
副都心の警察署は散々サイバー犯罪課を宣伝していたのに無かった。それどころか怒鳴り声などの喧騒でバブル君を不安にさせた。息切れしかけた警察がバブル君の前にやって来て言った。何故息切れしているのかとバブル君は不穏に思ったが遠くから走って来たのだろう。まさかバブル君の見張りで警察署に行くのに追い越す為に走って対応しようとしたと言う事はないだろうとバブル君は己の自意識過剰を否定しながら思った。
『どこの地域にお住まいですか?』バブル君は耳を疑ったが切り返した。『国内でこの副都心の警察署のみでサイバー犯罪課が出来たと聞きました。私のスマホがハッキングされているかも知れません。助けてください。』『どこの地域にお住まいですか?』警察は大事無ことの様に同じ質問をして来た。『他の地域に住んでいたら助けてくれないんですか?』『サイバー犯罪課なんてありませんよ。この警察署は副都心…この区に住んでいる人しか対応しません。貴方の家の最寄りの警察署に行ってください』バブル君は大変不満だった。これは遠路はるばる道に迷った老人が来ても警察は相手にしないと言う事だ。これが日本の警察のする事か?と疑問も合わせて胸がいっぱいになったがバブル君は無能だが大人なので従って指定の警察署に行くことにした。
道中、バブル君は警察署のホームページを確認したらサイバー犯罪課の項目が無くなっていた。『何故?TVのニュースでも報道していたのにサイトからも消えた?サイバー犯罪課は消されたのか?』バブル君はまた有給休暇を使用して警察署に行くことになる。
副都心が指定した地元の警察署はバブル君の家から徒歩50分の所にあったが隣に役所があり信頼出来そうな所だったしエレベーターも存在するバリアフリー設計だった。バブル君は窓口で予約しなかったのに、そのまま2階の案内所に連れて行かれた。安心の警察署だったが異様な雰囲気だった。警察官たちは普通だったが見えない人間が多数いる様な気配を感じていたのだ。音は無かったがバブル君の第六感だと思われた。バブル君に言わせれば誰もいない空間だったが沢山の人が来て空気を汚した感覚だった。
バブル君に相談対応したのは優しそうな背が低めの中年の警察官男性だったが普段は事務をやっている様に思われた。バブル君はスマホに変なメッセージが送られてくる事のついでに会社のPCがハッキングされて操作されている可能性についても相談したのだった。だが5分相談しただけで相談役の警察官は呼ばれて離席したのだ。バブル君は再び警察官が戻って来るのに5分近く掛かった様に感じたが、再び彼を目にし驚いた。
相談役の警察官の顔には青痣が2箇所出来ておりは身体は震えていた様に見えた。いや、震えを精神力で抑えていたが抑えきれない様に見えたのだ。そして彼の視線は恐怖で黒目が泳いでいた。声も震えていたが彼は目の前の可哀想な国民を不安にさせまいと気丈に振る舞い耐えていた。何故?とバブル君は思った。彼は相談は聞くが心ここにあらずと言う感じで背後を気にしていた様に見えた。背後は事務室だと思われた。電話もあるが微かな話し声はあるのに誰もなかなか電話に出なかった。それどころか恐怖する気配と言うより事務をする婦警さん達が逃げようとする音や倒れる様な聞こえた。
『毒だ…』『毒だ…』『死んじゃうよ…』『死んじゃうよ…』『2階に毒が撒かれるよ』バブル君の霊聴が騒いだ。相談役の警察官は用があると2分程度また離席した。
そしてまた彼はバブル君の相談の続きを聞きに戻るが彼ではなくなっていた。背格好も服装も髪型も全く同じだが微妙に顔が違ったし顔の痣は幻になっていた。バブル君の観察眼によると偽物の相談役は外国人の女性だ。何故か声真似は完璧だったがバブル君に取り憑いていた悪徳霊能力者の使役霊に刺されて調子が悪くなり元の声に戻りそうになっていた。
だが相談は相談だった。偽物の警察は相談の理解を拒んだのでバブル君はPCインストラクターの様に初心者向けの解説の様に端末がいかにオカシイか警察にする事になり、事件を説明するまでに3時間は掛かったのだ。事件の異常の説明を長時間細やかに求めた警察は最後に『お金が盗まれてないと捜査できないよ。お金が盗まれてからまた相談に来てください。』とバブル君を追い返した。バブル君は情報を搾取されて相談室から廊下へ追い出されたのだった。
『毒だ…』『毒だ…』『死んじゃうよ…』『死んじゃうよ…』『2階に毒が撒かれるよ』と言う言葉を思い出したバブル君は廊下に出た途端に気分が遠くなり昏倒しそうになった。まさか本当に毒であの事務室の異常な音の様な事になってしまうのだろうか?と思ったがバブル君が感じたのは遠のく意識の他に大きな渇望する様な本当の喉の渇きだった。バブル君は普段は決して自販機で飲み物は買わないがドケチ貧乏だが廊下にあった自販機へ倒れ込みそうになりながら最安のミネラルウォーターを買って一気飲みした。喉の渇きは癒え意識も正常になった様であった。危険を感じたバブル君はまだフラついていたが足早に警察署を去った。
バブル君は思った。『絶対に警察が殺されて入れ替わった!でも何で?警察が殺される?そんなの普通は不可能だ。もっと騒ぎになる筈だ。こんな町外れの警察署の人員を殺すメリットなんてあるのか?それとも全国的にやられているのか?喉の渇きも変だ。あの時、意識を失っていたら死んでいたかも知れない…』
バブル君は異常事態を誰に相談しても理解してもらえない状況になることを覚悟した。




