04創造への執着
アートスタジオを襲った人間もどき達はクリエイティブ職に強く執着してプロとして活躍しているクリエイターを激しく嫉妬していた様に見えた。バブル君としては大好きな絵に関わる仕事が出来たら…と言う素朴な願いからデザイナーという職に就いていたし、実際に見習いであったが専門学校を出た事もあり、それしか取り柄と言うか生きる道がなかった。
先輩の成り変わりもまたクリエイティブ職である事に誇りを持っていたが偽物なので他のクリエイターに激しく嫉妬したのだった。
本来、プロのクリエイターは同僚を敬い協力するものであるが、激しい嫉妬は見習いへっぽこデザイナーであったバブル君に向けられた。へっぽこでも分かる様なデザインのクオリティを下げる八つ当たりの様な指示を先輩かつ上司の立場を利用して行った。その嫉妬は本能に遺伝子レベルで刻まれた創造を行う彼方の神々への想いであった。この侵略者達にとっては進化と創造こそが最も価値があるものなのだ。
バブル君はへっぽこだったが腐ってもプロであり、納品物に対して時間内に提出するのは無論だし、ある程度の品質を保証しなくてはならないのだ。バブル君はデザイナーであったが納品物は決して『作品』とは呼ばなかった。作品と呼んでも権利は自分には一切無いからだ。
バブル君にとっての死活問題は残業時間の長さにあった。貧弱なバブル君は長期残業をすると睡眠不足になり作業時間も効率が悪く納品物の品質を落としがちになる。それが原因でサービス残業は悪い方向にエンドレスになって行くのだった。
バブル君は生活を守る為に先輩の偽物と思われる人物の八つ当たり攻撃を躱し、商品レベルの納品を行わなくてはならなかった。バブル君は多々、デザインを通す為に小さなプレゼンテーションをしなくてはならなかったし、第三者の他のデザイナーにも意見を求めた。
人間もどき達はアートスタジオを関係者だけにし乗っ取りたいのか、生き残りのスタッフにも攻撃を仕掛けた様に見えた。生き残りは一切会社に出社しないリモートワーク組だった。コミュニケーションツールであるチャットが社員スタッフ達に寄って、ちゃんねる系の荒らしの様に民度の低いチャットが繰り広げられたのだ。リモートワーク組はとても賢い高給スタッフ達でで異常に気が付くと問答無用で辞表を提出し逃げる様に会社を去ったのだ。
バブル君は物理的な攻撃をされなかったが、殺される時は本当の先輩方の様に逃げられずに殺されるのだろうと覚悟をして、ずっとアートスタジオで働いていた。バブル君は仕事のチャットを荒らしたスタッフ達に「疲れてるのなら休んでください」と面を向かって進言したが下っ端だったので受け入れてくれなかった。
そして有り得ない事にアートスタジオで機材の動作不良が頻繁に勃発する事になるのだ。特にPC関連は不良動作が多くバブル君はアプリのサポートに何度も何度も相談したが、なかなか解決はしなかった。バブル君は良く2Dグラフィックを作成するのだが色の指定は数値入力の後で目で見て補正していた。なんと指定した数字と違う色が出るのである。
バブル君は見習いであったがアートスタジオは基本的に資金不足であった関係か、バブル君はマウスでグラフィックを描画していた。グラフィックの位置指定に座標を数値入力するのだが、これまた位置がずれているのである。酷い時にはグラフィックの色が安定せず常に変化したり、頻繁にグラフィックがボケたりシャープになったり、常に造形が歪んで戻らない最悪の現象が続いたりした。
絶対にアプリの故障だと思いバブル君は先輩達を呼んで確認してもらったが現象は認めたが解決には至らず、納品物のクオリティを保証できないので、毎日の様にアプリのサポート先に相談をしたが、納期の関係で無理矢理に仕上げた。
この機材の不良発生時にバブル君は成り代わりのスタッフ達の様子に異常があると第六感は感じた。成り代わりのスタッフ達の機材もまた動作不良が発生するのだが、何かスタッフ達が念じると機材は直るのだった。念じるスタッフ達の中には視線が業務と関係ない明後日の方向を見ている事があったが、バブル君の無能な霊視では何も感じなかった。
しかしバブル君の観察眼にはこう見えた。人間もどきは強力な霊媒師の様な能力を備えており、PCやスマホのデバイスを遠隔で操作できる様でもあった。完全な能力の発動には守護霊の許可が必要であり確認の為に守護霊を見たのだ。
バブル君は常に悪霊と共にいて霊障を引き起こしていたが、感性が鈍かったので歯牙にも掛けなかった。だが人間もどきには霊障は災害の様なものだった。バブル君は以前、霊能力者に霊障について霊視で分析もらう為に3人の霊能力者に関わったが2人は悪徳霊能力者であり、バブル君の霊視が無能である事を良い事に逆に悪霊を憑けられたのだ。
悪霊は霊能力者の使役霊であり気分屋だった。先輩の守護霊が生意気だと言い遠くに吹き飛ばしたのだ。バブル君の予測では先輩の守護霊はオリジナルの死んだ先輩であり、高度なテクノロジーであっても生き返らせないのは、これが理由であると考えている。バブル君の想像が真実であるのなら非常に残酷である。
先輩に成り代わった人間もどきは守護霊を失うと朴念仁の様に宙を見つめ、ひたすらボーっとして、簡単であるはずのデザインの仕様書の文字も理解出来ない様なのである。バブル君は思った。『霊と繋がりが切れたら文字が読めない?日本人じゃないのか?それとも赤子の様な知性になってしまったのか?』兎に角、先輩は人間では無い…別の生命体と感じた。
先輩の守護霊は自分の偽物が何をするのか気になるのだろう。先輩の偽物の元に戻り、また自分の知識を強制的にか偽物に与え続けるのだった。なんと言う非人道的な奴らだろう。殺されたクリエイター達は素材なのだ。




