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魔法少女は契約精霊のことが嫌い  作者: 道上 萌叶
第1章 魔法少女ルシア
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闇が抜けて

 ペラタチスに向けて2発、魔力を打ち付けてから、ルシアは1番近い5階建ての建物に飛び乗る。


『?! おい、ルシア?!』


 ピアス越しに驚くロレンツォの声が聞こえるが、今は構っている暇がない。

 屋根を足場に、3階建てから5階建ての建造物が立ち並ぶG地区で1番高い建物、コメット大聖堂を目指す。

 ものの数秒で大聖堂に辿り着いたルシアは、大聖堂で最も目につく時計の上にある展望デッキに入り込む。

 すぐさま狙撃銃を構えてスコープを覗き込み、照準をペラタチスに合わせる。

 変わらずペラタチスは余裕のある動きで、エリンはペラタチスの攻撃をギリギリ避けていた。

 ルシアが抜けて、エリンはペラタチスに攻撃を仕掛ける余裕がないようだった。ペラタチスからの攻撃を避けるので手一杯の様子だ。

 このままではエリンが消耗する一方だ。

 早くペラタチスを仕留めたい。

 そう思うのに、害獣の弱点である魔石が、ルシアからは見えない。ペラタチスの額にある魔石は、大聖堂から見下ろしているルシアには、ギリギリ確認できない。ほんの僅か、ペラタチスが空を仰げば狙うことができるのに。


「ルシア!」


 どうやってペラタチスに上を向かせようか悩んでいると、ルシアより5秒ほど遅れてロレンツォも大聖堂に辿り着いた。


「ソレイユ旧市街の時のようにするのか?」


「ヒントはそこからだけど今回は私が仕留める」


「そうか」


 今は詳しく説明している暇がない。このままでは、エリンがもたない。

 ロレンツォもそのことを分かっているようで、深くは聞いてこない。


「あと、少し、何か…………あ」


 思考を巡らすルシアは、思い出したことがありロレンツォにチラリと目を向ける。


「どうした?」


「1ヶ月くらい前のH地区自然公園、エウアルの、あの時の光をペラタチスの上で出せる?」


 ルシアは視線をペラタチスに戻して、早口で問いかける。


「出来るが、かえって警戒心を植え付ける可能性があるぞ」


「大丈夫。一瞬だけ魔石が見えれば、いける」


「分かった。いくぞ」


 ロレンツォの言葉に、ルシアは軽く頷いて引き金に手をかける。チャンスは、1回きりだ。

 ペラタチスの強い打撃に、エリンが吹き飛ばされた。


「3」


 エリンに目を向けたいのを必死で堪えて、ルシアはロレンツォのカウントと、ペラタチスの動きに集中する。


「2」


 壁に打ち付けられたエリンを、淡い光が包み込む。


「1」


 よろよろと立ち上がったエリンが、ペラタチスを睨みつける。


「0」


 肩で息をするエリンに、ペラタチスが前足を振りかぶった時、ロレンツォが魔術を展開した。

 次の瞬間、ペラタチスの頭上で、強い光が放たれた。

 ペラタチスが空を振り仰ぎ、魔石が、見えた。

 瞬時に魔石に照準を合わせ、ルシアは引き金を引いた。

 ルシアが引き金を引いた直後、ルシアはペラタチスと目が合った。


「?!」


 背中がゾッと震え、呼吸が浅くなる。

 ペラタチスと目を合わせたまま、ルシアはペラタチスから目を逸らすことができない。

 肩で呼吸するルシアは、ロレンツォの声が耳に届いて我に返る。


「命中。流石だな」


 ペラタチスの赤黒い瞳に吸い寄せられていたルシアは、ロレンツォの言葉にハッとした。

 ペラタチスの額に目を向けたルシアは、魔石にヒビが入っていることを確認する。

 ペラタチスと目を合わせていたのはとても長い時間に感じられたが、実際には数秒程だったらしい。

 さっきまでルシアを引き寄せていた赤い目からは光が失われ、魔石が崩れ落ち、灰色の毛並みは光を反射しなくなり、灰となって消えていく。

 エリンがホッとしたように肩を下ろしたのを確認して、ルシアはスコープから目を離す。


「ペラタチスの魔石を確実に狙うために、エウアルの時の光を利用したんだな」


「‥‥‥ん」


「害獣は強い光に反応する性質を持っているからな。もし失敗すれば警戒されて場所を移動しないとだったが、さすがはルシアだ。1発で成功させた」


「‥‥‥ん」


「ソレイユ旧市街のヒントってのは、魔法壁の外からでも狙うことができるってのだな。戦闘態勢にある魔法少女と契約精霊が魔法壁をすり抜けられるように、魔法少女と契約精霊の魔力もすり抜けることができるって考えたんだな」


「‥‥‥」


「あの時は気付かなかったが、ケルセイスの時も魔法壁を越えての戦闘だったんだな」


「‥‥‥」


「エリンさんにはお礼をしないとだな。今回はエリンさんがいなかったら危なかった」


「‥‥‥」


「おい、ルシア?」


 ルシアの作戦を理解したロレンツォの、まるで答え合わせの様な確認に返事をすることが、面倒だったわけではない。ただ、返事をすることが、酷く億劫だった。

 無言のまま魔力を解除したルシアは、ふらつく足を鼓舞して立ち上がる。だが、震える脚から勝手に力が抜け、その場に座り込んでしまった。


「おい、大丈夫か?!」


 ロレンツォの声が耳に届くが、呼吸が浅くなっているルシアは反応ができない。

 反応するどころではない。声を、出すことができない。息をするのに精一杯で、座っていることも辛い。


「ルシア!」


 魔法少女は、害獣の討伐が完了したら、すぐに現場から立ち去らなければならない。ルシアの家はここから近いところにあるから、魔法少女の姿なら数秒で帰ることができる。

 それなのに、ルシアの身体に、力が入らない。魔法少女の姿を保つことが、出来ない。

 キィンと耳の奥で甲高い音が鳴り響いた直後、ルシアの身体を淡い光が包み込み、魔法少女の姿が解除されてしまった。近くでロレンツォが何かを言っている気がしたが、ルシアは何を言っているのか理解できなかった。

 魔法少女は、戦闘直後は大きく魔力が失われる。だけど、魔力を使用するよりも早いスピードで魔力が溜まってしまうルシアは、戦闘後に魔力が失われる感覚を味わったことがない。だから、これが魔力不足によるものだとは思わなかった。



 暗い闇の中で、ルシアは夢を見た。

 夢には、ロレンツォやシスター、ルシアの知っている人がたくさん登場した。知らない人も、たくさん登場した。

 たくさんの人達から、ルシアは逃げていた。逃げて、1人涙を流して苦しんでいた。

 ルシアの夢に登場した人達は、ルシアの容姿を気味悪がり、ルシアを遠巻きにして、一様に同じ言葉を繰り返していた。


「気持ち悪い髪と目。まるで悪魔の子」

1章、完結です!

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