表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女は契約精霊のことが嫌い  作者: 道上 萌叶
第1章 魔法少女ルシア
12/27

研修 5

!と?の後は1マス空けると知り、このエピソードからそのようにしています。これ以前の投稿も少しずつ修正していきます。


今回、少し長くなってしまいました。

 ケルセイスの長くて鋭い()のような脚が(くう)を切る。鋭い牙が獲物を、エリンを捕えようとガチン、と音を立てる。

 ケルセイスの攻撃をすんでのところで避けたエリンは、8本ある鋭い脚の一本を切り落とすために斧の形に変えた魔力を振りかぶる。


「えい!」


 ガキイィィイン!!


「く、ぅ……!」


 振りかぶった魔力()は、エリンの狙い通りケルセイスの脚の付け根に当たる。が、ケルセイスの堅い脚は、硬化したエリンの魔力()をいとも容易(たやす)く弾く。

 想像以上に堅いケルセイスの脚は、全力で魔力()を振り下ろしたエリンの両手をビリビリと痺れさせる。

 攻撃を与えたエリンは、痺れる手で魔力()を持ち直し、全くダメージを感じていないケルセイスの攻撃を(かわ)す。

 ポウ、とエリンの右耳のピアスが光り、熱をもつ。ピアスの熱がエリンの両手を包み込み、ビリビリ痺れていた両手は感覚を取り戻す。


「アラベラ、ありがとう!」


「エリンちゃん、これ以上は硬化できない。脚は切れそうにないわ。やっぱり糸を出す(あの)瞬間を狙うしかなさそうよ」


 エナガの姿のアラベラが、ケルセイスの攻撃を(かわ)すエリンの周りを飛びながら言う。


「やっぱ、だめかー! アラベラ、危ないからっ下がってて、ね!」


 ケルセイスの攻撃を避けながら、エリンはその時が来るのを待つ。

 ブオ、と音を立てて、エリンの顔ギリギリをケルセイスの脚が横切る。その直後、ケルセイスの攻撃が止んだ。


「そっ、ろそろ!」


 タタッ、とケルセイスから距離をとったエリンは魔力()を構えて腰を低くし、まもなくやってくる瞬間を逃さないように集中する。

 フルフルとケルセイスがお尻を振った後、鋭く長い8本の脚を限界まで伸ばした。そして、


 シュパッ!


 お腹を見せて、ケルセイスがお腹から糸を出した。キラリ、とケルセイスの魔石(弱点)が光る。

 ケルセイスが糸を出す瞬間まで粘って、糸が出された瞬間に地面を蹴ったエリンは、自分に向かってくる糸を左に()けて、ケルセイスの魔石めがけて魔力()を振り下ろす。

 お腹をエリンに見せて、不安定な姿勢のケルセイスはエリンの攻撃を避けることができない。これで終わり。


 ガキイィィイン!!


 だが、エリンの攻撃を受けたケルセイスは、何のダメージも負ってはいない。

 エリンの攻撃が魔石(弱点)に到達する直前、ケルセイスはお尻を引っ込めて伸ばしていた足を曲げると、エリンの攻撃を堅い足で受け止めた。


「ゔぃ‥‥‥った~!」


 魔石めがけて全力で振り下ろした魔力()は、ケルセイスの硬い足に弾かれた。

 ビリビリ痺れる手を、ピアスの熱が包み込む。


「う、わー! 今っの! すっごく、惜しいっ!」


 ケルセイスと戦闘を開始して15分近く経つ。

 15分の間にケルセイスがエリンめがけて糸を放出したのは10回以上。1分おきに糸を放出している。

 つまり、1分おきにエリンにはケルセイスの魔石(弱点)を狙うチャンスが来ている。にも関わらず、エリンは(いま)だにケルセイスを討伐できていない。先ほどのように糸を避けながら魔石を砕こうとしているのだが、エリンの魔力()の先端がケルセイスの魔石に届くよりも、ケルセイスが魔石を地に向けて脚でガードする方が早い。

 ケルセイスの堅い足は、エリンの魔力では切り落とすことができずに弾いてしまう。その度にエリンは両手がビリビリ痺れ、アラベラの治癒魔法で回復している。

 それならいっそのこと、堅くて邪魔な足を切り落とし、動けなくなったところで魔石を狙えばいいのではないだろうか。アラベラの魔術でエリンの魔力()を限界まで硬化して、刃先を鋭くしてから。その考えに至ったのが1分前。

 結果、限界まで魔力()を硬化して刃先を鋭くしたところで、堅いケルセイスの脚には通用しなかった。結局腹を見せた瞬間を狙うしかなくなった。

 ケルセイスの攻撃を(かわ)し、時々受け流しながらエリンは考える。


(今の、すごい惜しかった。後1秒でも私が早かったら届いていた筈。もっと、早く動けばいけるかも)


「アラベラ! 瞬発魔術、展開っしてるよね?!」


「もちろんよ。今が1番速くなっているわ」


 打てる手はすべて打っている。後はエリン次第だ。

 ケルセイスがエリンを狙って大きく脚を振りかぶった後、エリンが離れるよりも先に、()()()()()()()()()離れていった。その直後に、ケルセイスはお尻を振り出した。

 今度こそ、届かせる。

 訪れた時間をほんの僅かでも無駄にしないように構える。

 瞬きすることも忘れ、エリンはケルセイスの動き全てに集中する。

 ケルセイスが足を伸ばした。フルフルと振っていたお尻の動きが止まり、お腹が再び(あら)わになる。パシュッと音を立て、ケルセイスの腹から糸が放出された。と同時に、エリンは地面を蹴る。

 エリンの顔の横を、ケルセイスの糸が横切る。

 が、エリンの瞳にはケルセイスしか、ケルセイスの腹でチカリと光る魔石しか映っていない。

 ケルセイスと距離を詰めたエリンは、僅かにケルセイスの脚が動いたように見えた。


(っ! また、間に合わない?!)


 だが、エリンは既に魔力を振り下ろしているところだった。止まることはできない。

 もしかしたら間に合わないかもしれない。だが、間に合うかもしれない。一瞬でも躊躇(ためら)えば届かない。なら、間に合う方に賭けるべきだ。

 歯を食いしばり、エリンは全力で魔力を振り下ろした。


「はぁあああ!」


 ガキィン!

 エリンの魔力()が、硬いものに当たった。


「あ、たった?!」


 エリンの魔力()()が、ケルセイスの魔石に当たっていた。

 魔石は魔力の当たっている部分からパキパキと音を立てて砕けていく。

 パァ、と魔石が強い光を放ち、次にエリンが瞬きをした時には砕け散っていた。

 サラサラとケルセイスの体が灰になって空中に消え、後には小さな魔石が残っていた。


「エリンちゃん、やったわね!」


「アラベラ……」


 エリンの肩に、エナガの姿のアラベラが止まる。


「あら? あまり嬉しくなさそうね」


 20分近い戦闘の末、エリンはケルセイスを討伐することができた。嬉しくないはずがない。


「嬉しいよ! 嬉しい、けど……」


 エリンは肩のアラベラから小さな魔石の落ちている地面に目を向ける。

 既に灰となって消えてしまったケルセイスは、戦闘時の緊張感とともに消えてしまっている。残された魔石が、朝日を受けてキラリと赤く光っている。


「けど?」


「今のが届くと思わなかったから、なんだか拍子抜けしちゃった……」


 9割当たることはないと思っていた。それなのにエリンの魔力はケルセイスの魔石に届いていた。

 素直に嬉しいと思いたいが、何故あれが届いたのかという疑問が残る。


「何で、届いたのかな」


「そうねえ」


 呆然と呟くエリンの肩から地面に降り立ったアラベラが、小さな(くちばし)をいっぱいに開けて魔石を(くわ)える。パタパタと羽を広げて地面から離れると、咥えていた魔石をエリンの腰から下がっているポーチに入れる。


「エリンちゃんの諦めないって気持ちが、少しでも動きを早くしたのかしらねぇ」


「うーん」


 そう言われても、納得できない。

 だが、エリンは深く考えることはできなかった。

 続いたアラベラの言葉に、大変なことを思い出したからだ。


「それよりエリンちゃん、私お腹が空いちゃったわ。朝ごはんはどうしましょ」


「あはは。じゃあ宿に荷物を預けてから開いてるお店に……ああ!」


「エリンちゃん、どうしたの?」


「アラベラ、荷物! あたし達の荷物、汽車の中!」


「あら、そう言えば持ってきてないわね」


「今、汽車ってどこ?! ああ〜、そんなこと考えてるより早く取りに戻らないと! アラベラ、全力出すから、ポーチの中に入って!」


 エナガの姿になっているアラベラは、エリンの全力についてくる事ができない。

 あまり慌てている様子のないアラベラがポーチに入ったことを確認して、エリンは地面を蹴る。

 ポーチの中でアラベラが飛行魔術をエリンにかける。

 背中から白い羽の生えたエリンは、汽車のいるであろう方角に目指して飛んでいく。



 エリンが飛び去って行ったことを確認してから、私は(ようや)くスコープから目を離す。

次回は18日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ