第2章完結 「絆を紡ぐ湯気の国」
◆ 王都・夜の大広場
ラーメン祭が終わり、人の波が去った広場。
祭の後に残るのは、まだほのかに漂う薬膳の香りと、
床石に染み込んだ笑い声の余韻だった。
美月は一人、広場の中央に立ち、
静かに両手を胸の前で組んだ。
「……ここまで来られたのは、みんなが“笑顔”を信じてくれたから」
月明かりに照らされた彼女の瞳は、まっすぐ未来を映していた。
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◆ 仲間たちとの会話
そこへリリアーナが歩み寄り、柔らかく微笑んだ。
「美月様……この国は本当に変わりましたわ。
もう誰も、ラーメンをただの料理とは思っていません」
クラリーチェが元気に手を振る。
「そうですわ! ラーメンは文化であり、絆そのもの!
わたくし、世界中の人と一緒に食べてみたいです!」
ゼファル王子は夜風を受けて目を閉じ、低く言った。
「……これから先、国境の外からも多くの人が押し寄せるだろう。
だが、その波を受け止められるのは、今の我らだけだ」
ギルド長は酒瓶を掲げ、にやりと笑う。
「ええこと言うな王子。……ほな、美月、次は世界を相手にせなアカンで」
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◆ 美月の決意
仲間たちの言葉を受け、美月は広場を見渡す。
つい昨日まで、ここに国中の人々と外国の使節たちが肩を並べ、
同じスープをすすり、笑い合っていた光景が甦る。
「……ラーメンで国を一つにできた。
なら、次は――ラーメンで世界を一つにしよう」
その声は夜空に溶け、月と星々に届いたかのようだった。
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◆ 未来へ
大広場の片隅。
帰国の途につく使節団のひとりが、仲間に囁いた。
「この国の力……やがて世界を揺るがすかもしれぬな」
「だが、それは戦ではなく“湯気”でだ」
彼らの船が夜の河を下り、遠い国々へと向かっていく。
その先で、また新たな“ラーメンの物語”が芽吹こうとしていた。
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― 第二章 完 ―