第2章 第43話 「女王のラーメン祭」
◆ 王都・祭の幕開け
王都の大広場。
幾重にも張られた幟には大きく書かれている。
女王のラーメン祭 ― 世界を結ぶ湯気の宴
広場には仮設屋台がずらりと並び、各地の代表、そして他国の使節団までもがラーメンを持ち寄っていた。
薬膳の香り、香辛料の刺激、魚介の潮の匂い――
大広場は、まるで世界の台所のように湯気で霞んでいる。
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◆ 祭の司会
舞台の中央に立つのはクラリーチェ。
鮮やかなドレスを翻し、張りのある声で宣言した。
「皆さま! 本日は女王のラーメン祭へようこそ!
ここに集まった一杯一杯が、国を越え、人を結びつけますわ!」
観客席から大歓声。
リリアーナは舞台袖で腕を組み、
「……やけに堂に入った司会ですわね」と苦笑する。
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◆ 世界のラーメン
各屋台では、国境を越えたラーメンが次々と披露されていた。
砂漠王国ブース:「我らの“熱風スパイス麺”を薬膳塩と融合! 新たな力強い味です!」
山岳ブース:「高原ハーブと鶏白湯の組み合わせで、心も体も温まる一杯に!」
海洋国家ブース:「海潮醤油を基本に、南方の貝を加えた“蒼海ラーメン”!」
観客たちは器を手に行列を作り、丼を片手に笑顔を交わしていた。
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◆ 舞台上の美月
舞台に立った美月は、両手を広げて観衆を見渡した。
「皆さん……この祭りは、ただの料理大会ではありません。
ラーメンを通じて国が交わり、友達になり、未来を築く祭りです」
ゼファル王子が横に立ち、声を重ねる。
「剣や盾ではなく、麺とスープで結ばれる絆……それがこの国の強さだ!」
歓声が一段と大きく広がり、観衆は杯や丼を掲げた。
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◆ 夜のクライマックス
祭が最高潮に達したころ、広場中央に巨大な鍋が運び込まれた。
「女王の特製“絆ラーメン”!」
美月とスタッフたちが力を合わせて作ったその鍋からは、優しい薬膳の香りが立ち上る。
「この一杯を分け合い、今日ここに集まった全員が絆を結びましょう!」
丼によそわれたラーメンが観客の手に渡り、
国内の人々も、外国の使節も、子どもも老人も、同じスープをすすった。
一瞬の静寂の後――。
「……うまい!」
「身体が温まる!」
「これが“絆”の味か!」
広場は歓声と拍手に包まれ、夜空に星がまたたいていた。
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◆ 美月の胸の内
(国も、人も違うけれど……同じラーメンを食べれば、笑顔でつながれる。
これこそが、私の目指した世界平和の第一歩だね)
湯気が夜空に昇り、星と溶け合いながら、
国を越える未来の絆を描いていくようだった。