第2章 第35話 「ご当地サロンラーメン誕生! 国中を結ぶ湯気の輪」
◆ 各地に広がる拉麺サロン
王都と港町で成功した拉麺サロンは、瞬く間に国中へと広がっていった。
地方の領主たちは競うようにサロン建設を進め、そこから“ご当地色”を強く打ち出したサロンラーメンが次々と生まれていく。
リリアーナは地図を広げながら、美月に報告する。
「山岳地帯では、薬草をふんだんに使った“高原ハーブ麺”が生まれましたわ」
「砂漠のオアシスでは、唐辛子と香辛料を組み合わせた“熱砂スパイス麺”です」
「そして、湖畔の村では魚介と蓮の実を使った“蓮華湖ラーメン”が……」
クラリーチェは手を叩いて大喜び。
「まぁ! それぞれの土地の個性がラーメンに! 素敵すぎますわ!」
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◆ サロンでの交流風景
山岳サロン。
木の柱の間で、村人と旅人が一緒に薬草を刻んでいる。
「こいつは体を温めるんだぞ」
「へぇ! じゃあスープに合うかも!」
砂漠サロン。
香辛料の棚の前で、汗だくの参加者たちが笑っていた。
「辛い! でもうまい!」
「もう少しミントを入れてみよう!」
湖畔サロン。
漁師たちが蓮の葉を皿代わりにして、子どもたちと試食会。
「この蓮華湖ラーメン、花の香りがする!」
「わたしたちの村だけの味だね!」
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◆ 美月薬膳拉麺の立場
当初は「家庭ラーメンが広がれば店の売り上げが減るのでは」と心配されたが――。
むしろ逆だった。
各地のサロンラーメンが話題になればなるほど、
「美月薬膳拉麺の味を参考にしよう」
「原点を学びたい」
と、本店や学院への来客が増えていった。
スタッフの一人は笑って言った。
「今やうちは“ラーメン界の聖地”やな」
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◆ 王都での試食会
各地のサロン代表が王都に集まり、「ご当地サロンラーメン試食会」が開かれた。
ズラリと並ぶ丼の数は二十を超える。
ゼファル王子は目を輝かせて箸を手に取った。
「どれも力強い味だ! これは国の宝になる!」
リリアーナは笑みを浮かべながら一口。
「……地域ごとの暮らしや文化が、こんなにも違う形で表れるのですね」
クラリーチェは頬を赤らめながら宣言する。
「美月様! これはもう、“全国サロンラーメン博覧会”を開くべきですわ!」
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◆ 美月の感慨
鍋の前で美月は、みんなが楽しそうにラーメンを食べる姿を眺めていた。
「……ラーメンが人を笑顔にし、地域を元気にする。
週休3.5日も、仕事+1も、このための種だったんだね」
湯気の向こうで、人々の笑い声と拍手が重なり、
国は今までにないほど活気に満ちていた。