第2章 第32話 「ラーメン+1博覧会! 奇想天外どんぶり大集合」
◆ 博覧会開幕
王都大広場。
幟が風にはためき、人の波が押し寄せていた。
「第1回 ラーメン+1博覧会」――国中の“仕事+1ラーメン”が一堂に会する日だ。
演台に立つ美月は、どんぶりを片手に微笑んだ。
「今日は、皆さんの“夢のラーメン”を思いっきり楽しみましょう!」
観客:「うおおおおお!」
クラリーチェは両手を胸にあててきらきら。
「まあっ! 夢と湯気が溢れておりますわ!」
リリアーナは冷静に周囲を見回す。
「……この熱気、ちょっとした戦場ですわね」
ゼファル王子はにやりと笑う。
「悪くない戦だ」
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◆ 出展ラーメンその1:吟遊詩人ラーメン
ステージに登場したのはリュートを抱えた吟遊詩人。
「さあ皆さま、食べながら歌いましょう! ♪ラーメン、ラーメン、愛のスープ~♪」
食べた観客が一斉に合唱し始め、広場がまるで合唱コンサートに。
美月は頭を抱えた。
「……これはラーメン博覧会なのか、音楽祭なのか」
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◆ 出展ラーメンその2:猫ラーメン
次は「猫観察同盟」の出展。
「我らが考えたのは、“猫のためのラーメン”です!」
鍋から小さな器に盛られたのは、塩分控えめ魚スープに細かい煮干し。
にゃあああ!
広場に連れてこられた猫たちが一斉に群がり、完食。
クラリーチェは両手を合わせて感嘆する。
「まあ! 猫まで幸せに!」
リリアーナ:「……ただの魚スープにしか見えませんけど」
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◆ 出展ラーメンその3:回転屋台ラーメン
子ども発明クラブが披露したのは、車輪付きの小屋。
「見てください! 屋台がぐるぐる回りながらラーメンを売るんです!」
屋台がぐるりと回転。
スープを受け取った客が次の瞬間――ぐるんと後ろに押し出される。
「うわっ、目が回る!」
「でも新鮮だ!」
ゼファル王子:「これは……戦場の移動食堂に使えるかもしれん」
美月:「いやいや、軍事利用しないでください!」
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◆ 出展ラーメンその4:港町“酔っ払い舟歌ラーメン”
港町お調子者コンビが登場。
「スープに酒を少し入れて~♪ 舟歌と一緒に召し上がれ~♪」
食べた観客たちはほろ酔いで肩を組み、広場で盆踊り状態。
リリアーナ:「……これは完全に宴会ですわね」
美月:「……でも楽しそうだからいいか」
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◆ 博覧会の結末
結局、どのラーメンが一番か決めるのは難しく、
美月は笑って宣言した。
「優勝は……みんなです! だって、どのラーメンも幸せを作ったから!」
観客:「ばんざーい!」
広場は湯気と笑顔に包まれ、夜空にまで笑い声が響いた。
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◆ 美月の実感
後片付けのあと、美月は一人で鍋を見つめながら呟いた。
「……ラーメンは人を笑顔にする。
それが“仕事+1”で広がるなんて、本当にうれしい」
星空の下、湯気が立ちのぼる。
それはまるで、国の未来がぽかぽかと温まっていくようだった。