第2章 第29話 「新政策“仕事+1”! 趣味と夢を国が応援」
◆ 美月の新たな発表
週休3.5日制度が港町から広まり、いまや国内のほとんどで根付いた頃。
人々は余暇を手にし、笑顔が増え、経済も上向いた。
美月は、王都広場の大演台に立っていた。
「――みんなの暮らしが豊かになり、私もうれしいです。
そこで次の提案です。“仕事+1政策”!」
群衆がざわめく。
「それはつまり、みんなが仕事以外に“もうひとつの仕事”を持つ、ということですか?」
「いえ、強制ではありません。やりたい人は国に申請してください。
趣味や夢、やりたいことを、国がちょっと応援します!」
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◆ 政策の内容説明
美月は板書を掲げた。
•資金援助(道具や場所代の一部を補助)
•仲間集めのサポート(告知やイベントの場を提供)
•必要なら講師を紹介(専門家ネットワークを活用)
「釣りを研究したいなら船や道具を。
陶芸を学びたいなら先生や窯を紹介します。
音楽をやりたいなら仲間と練習の場を。
……“もうひとつの自分”を育てる政策です」
クラリーチェは目を輝かせた。
「まあ! わたくしも“歌劇団+1”を作ってみたいですわ!」
リリアーナは控えめに笑う。
「……私は薬草研究会かしら」
ゼファル王子は腕を組んでうなずいた。
「余暇を“遊び”だけでなく“挑戦”に。これは新しい」
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◆ 国民の反応
発表後、さまざまな声が飛び交った。
「わしは昔から木工が好きでなあ。弟子を集めて“港町木工ギルド”を作ろう!」
「わたしは絵描きになりたい。だけど筆も紙も高くて……」
「農家やけど、休みの日に“楽器隊”を作ってみたいんや!」
笑顔で相談する人々。
新しい夢を口にする人々。
美月はその姿を見て、胸が温かくなった。
「――みんなが幸せに暮らすこと。これが本当にやりたかったこと」
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◆ 政策の初動
ほどなくして申請が殺到し、役所は大わらわ。
「仕事+1、陶芸会を結成したい!」
「魚料理研究同好会を支援してほしい!」
「昼宴会クラブって申請できますか?」
役人:「……最後のは却下だ!」
ロカン(陶芸家)が肩を叩く。
「美月女王、この制度は本気でええわ。わしも陶芸+1の弟子が一気に増えたで」
ゼファル王子は笑う。
「笑顔の国づくりから、夢の国づくりへ――か」
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◆ 美月の想い
その夜、美月は星空を見上げてひとり呟いた。
「余暇で笑顔が増えた。次は、夢を叶えることで心が満たされる。
きっと、この国はもっと強く、優しくなれる」
潮風が髪を揺らし、遠くで子どもたちの笑い声が響いていた。
美月の政策は、またひとつ新しい未来を描き始めていた。