第2章 第23話 「港町はすでにお祭り騒ぎ!? つけ麺外交、加速する!」
◆ 上陸前から全開ウェルカムモード
港に着く前から、太鼓と笛の陽気な音が響きわたる。
桟橋の向こうには、色鮮やかな布をまとった踊り子たち、屋台の準備に追われる料理人たち、そして――
「ミヅキさまーっ! ミヅキさま大歓迎ーーっ!」
人混みの中から、港町の市長らしき恰幅のいい男性が、全力で手を振っていた。
ゼファルが美月の横顔をちらり。
「……なあ、美月。“ちょっとだけ手紙”って言ってたよな?」
「……だって、歓迎される方が交渉もスムーズになるかなって……」
リリアーナが小声でクラリーチェに囁く。
「やっぱり計算の上でしたわね」
「ええ、もう完全に狙ってましたわ」
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◆ 市長との第一声から予想外
船を降りた瞬間、市長が豪快に両手を広げて近づいてきた。
「いやあ! 本物のミヅキさまをお迎えできるとは! “週休3.5日”の救世主、そして“世界をつけ麺で救う女王”!」
美月は思わず吹き出す。
「救世主はちょっと大げさですよ!? ただのラーメン屋出身ですから!」
「いえいえ、こちらではすでに“ミヅキさまの休日論”と“つけ麺哲学”が講義として取り上げられておりましてな!」
ゼファルが呆れ半分で笑う。
「……港町、情報の回りが早すぎだろ」
「うちの港は商人の耳が早いんです! それで――」
市長はドンと胸を叩く。
「このフェス、もう市民全員で全面協力いたします!」
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◆ 予算が跳ね上がる瞬間
「協力って……どのくらいの規模ですか?」
美月の問いに、市長は指を三本立てた。
「だいたい、通常の夏祭りの“三倍”規模です!」
リリアーナが凍りつく。
「三倍!? それはもう都市規模の祭典ではなくて?」
「はい! 港全域をフェス会場にしまして、船着き場から大通りまで全部つけ麺屋台に!」
クラリーチェはうっとりした表情。
「夢のようですわ……港全体が麺とスープの香りに包まれるなんて……」
ゼファルが額を押さえる。
「……美月、これはもう“こじんまり”じゃないぞ」
「……あ、うん。わかってる。わかってるけど……楽しくなってきた!」