第2章 第16話 「制度定着のための裏方奮闘編」
◆ 裏方は今日もフル稼働
週休3.5日制度が始まり、国中が浮かれる中――裏方は全く休んでいなかった。
王宮の作戦室では、リリアーナとクラリーチェ、そして各部門の責任者たちが地図や書類を広げている。
「観光地は平日に人が分散して順調。でも……商業区の一部が閑散気味ですわ」
「漁業地区は逆に休み組と稼働組が混ざって、作業工程がやや混乱してるようです」
クラリーチェの報告に、リリアーナが顎に手を当てる。
「これは調整が必要ですわね……“美月様には内緒”でやりましょう」
「そうですね。女王様に心配させたら、また休み返上で動かれますから」
と、商業ギルドの責任者。
全員が深くうなずくと、作戦会議は一層熱を帯びた。
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◆ “休日革命”の影の立役者たち
クラリーチェは文官チームを引き連れ、各地の店舗や工房へ出張。
「皆さま、週休3.5日制度における新しい納期表をご用意しましたわ！」
「おお、助かる！」と職人たちの顔が明るくなる。
「こういうところがクラリーチェ様のすごいところだよな……」
「まさに休日の守護天使ですわ」
と、職人の奥様方がこっそり盛り上がっていた。
一方、リリアーナは騎士団詰所へ。
「騎士団の交代勤務表、完成しました！ これで魔物討伐も休日も両立できますわ！」
団員たちが歓声を上げる中、ひとりがこぼした。
「リリアーナ様……これって、ご自身は休んでるんですか？」
「わたくしの休日は、美月様と過ごす時間ですもの。それで週休七日ですわ」
と、さらっと言って場を赤面の渦にした。
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◆ 美月、気付かぬままのんびり
そのころ、美月は領地の温泉で足湯に浸かっていた。
「ふぅ〜……やっぱり、休みっていいなぁ……」
チグー（ちびグリズリー）が横で湯けむりに包まれながらゴロゴロしている。
「ねぇチグー、なんか最近、国の仕事がスムーズなんだよね。
みんな優秀だからかな〜。ありがたいなぁ」
――その背後で、彼女の“休日革命”を死守すべく暗躍する二人の姿など、知るよしもなかった。
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◆ そして夜の密談
「リリアーナ様、次は市場価格の変動に合わせた休日調整ですわね」
「ええ、それと同時に……休日イベントの提案も作りましょう。
せっかくなら休日が経済を回す仕組みにしたいですもの」
二人は地図と予定表を並べ、深夜まで作業を続ける。
外では虫の音が響き、窓からは月明かりが差し込む。
「……美月様が、本当に安心して笑える国にするために」
「ええ、そのためなら、わたくしたちの休日なんて――」
こうして、“休日革命”は影の立役者たちによって着実に根を下ろしていった。
