第2章 第13話 「空の国、未来会議」
「いやぁ……うまかった……」
試食会が終わると同時に、空の民の幹部たちは頬をさすりながら椅子に腰を下ろした。
「ふぅ……」とお茶を一口飲んだ瞬間、ルーファス公が咳払いをする。
「さて、美月殿。食後で申し訳ないのですが、このまま国の相談に乗っていただけませんか」
「え、私が?」
「はい。せっかく女王陛下がいらしているのですから」
ゼファル王子が笑って肩をすくめる。
「ここの幹部連中、美月の話だとやたらやる気出すんだよ」
「そんな……」と苦笑しつつも、美月は長いテーブルに着席する。
そこには、空の国の王、幹部たち、ゼファル王子、そしてリリアーナとクラリーチェが並んでいた。
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◆ 空の国の課題
最初に話題に上がったのは、食糧の安定供給。
「空の農地は限られております。地上との交易を増やすべきですが、輸送コストが……」
農務長官のティエルが眉を寄せる。
「観光業は順調ですが、繁忙期と閑散期の差が激しすぎます」
商務長官が次に口を開く。
「それから……魔物の空路侵入が増えております」
警備隊長が地図を広げる。
「対人討伐軍を縮小して魔物対策に回してはどうか、という意見もありますが……」
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◆ 美月の視点
美月は一つ一つの意見に耳を傾け、メモを取っていた。
(地上では普通に解決できることも、空では条件が違う……風、重力、農地面積、移動コスト……)
「まず、食糧は地上の余剰分を定期便で運び、その便で空の特産を下ろす“相互輸送”にしましょう。
片道だけ荷物を積むとコストが高くなるので」
「観光は……季節ごとにテーマを変えて“年中フェス”にすれば、空と地の交流も増えます。地上では、現在週休3.5日を目指して調整中なので、平日でも地上からの観光客でしたらよぶことができます。」
「魔物は……地上の騎士団から空戦経験のある者を半年交代で派遣します。代わりに、空の国からも地上に風術士を派遣して、災害時の救援を行っては?」
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王は顎に手を当て、美月を見つめた。
「なるほど……双方が利益を得る形ですな」
ルーファス公もうなずく。
「やはり女王陛下の視点は実務的で、しかも早い。これなら一年以内に成果が出るでしょう」
「もふ(ボクも魔物警備に参加する)」
「いやチグー、君は“もふもふ外交”担当だから」
ゼファル王子が即座に却下し、場が笑いに包まれた。