第2章 第12話 「雲土と大地の融合! 空と地の薬膳ラーメン誕生」
「……これが、雲土で育った野菜……」
美月は目の前に並べられた淡い色の根菜や、透き通る葉を手に取った。
「色は薄いけれど、香りがとても繊細ですわ」
リリアーナが鼻先を近づける。
「味は――」
かじった瞬間、ふわっと甘みが広がった。
「わ、やさしい……! 大地の野菜より水分が多くて、後味が軽い!」
「雲の上の畑では、重力が弱いぶん根が深く伸びない。だから根菜は小さく、柔らかくなるのです」
説明したのは、空中農園の若き農夫・ティエル。
「でも、このままだと地上の野菜に比べて栄養が偏る……それが今の悩みです」
________________________________________
◆ 空と地の素材の出会い
「なら、空の野菜と地上の野菜を合わせましょう!」
美月は即答した。
「例えば、雲大根と地上の薬膳人参を組み合わせれば、甘みと香りが両立するわ」
「さらに、スープは……」
クラリーチェが興奮気味に身を乗り出す。
「空のハーブ“スカイミント”を加えて、爽やかさを出すのはいかが?」
「いいですね。地上の干し貝柱と合わせれば、深みも増しますわ」
リリアーナも頷く。
「おお……空と地の合作だな!」
ゼファル王子は満足そうに腕を組んだ。
________________________________________
◆ 試作、そして試食会
美月は空中農園の調理場を借り、チームで試作を始めた。
鍋から立ち上る香りは、空港の広場まで漂う。
「もふーっ……!」
チグーは鼻をひくひくさせ、スープ鍋の前に陣取る。
「ダメダメ、まだ味見は――」
「もふっ(ゴクリ)」
「今飲んだでしょ!」
わいわいと笑い合ううちに、試作品が完成した。
透き通った金色のスープに、白い雲大根と橙色の薬膳人参が浮かび、スカイミントが彩りを添える。
________________________________________
◆ 空の国の変化
試食会には、ルーファス公や空の民の代表も参加した。
一口食べた瞬間、会場がざわめく。
「これは……身体が軽くなるようだ」
「味も香りも、空の食材なのに地上の力強さがある」
「この味が、地上と空をつなぐ橋になるのですね」
ルーファス公は深く頷き、美月に向かって言った。
「このラーメンを、アウリゼルの公式料理として登録しましょう」
「やったー!」
ゼファル王子が美月の手を高く掲げる。
「これで、空も地も一緒に発展できる!」