第2章 第11話 「アウリゼルへ! 空と土のラーメン外交」
朝日が連合王国の屋根を黄金色に染めるころ、美月たちは出発の準備を整えていた。
「それじゃあ、行ってきます!」
「美月様、忘れ物はありませんね?」
リリアーナが荷物リストを片手に、じろりとチェック。
「……えっと、替えのエプロン、薬膳スパイスセット、そして――」
「ゼファル王子へのお土産、忘れてますわよ」
クラリーチェがにやり。
「そ、それは別に必須じゃ……。一緒に住んでるし・・・・。」
「いいえ、外交上、必須ですわ。今回のつなぎ役ですから。」
二人の息がぴったりすぎて、美月は観念してお土産の包みをバッグにしまった。
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◆ 空へ向かう風船船
港に着くと、巨大な白いエアシップが雲を背景に浮かんでいた。
船首には金色の農具を象った紋章――アウリゼル王国の象徴だ。
「わぁ……すごい! 空飛ぶ畑だ!」
甲板の向こうには、棚田のように段々と広がる緑の畑が、空に漂っている。
「空の民は、地上に降りることが滅多にないそうですわ」
リリアーナが説明する。
「地上の土じゃなく、雲から採れる“雲土”で農作物を育てているんですって」
クラリーチェも補足。
「雲から……土? どういう理屈なの!?」
美月は早くもワクワクと混乱の中にいた。
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◆ 空の民との初対面
アウリゼルの首都に降り立つと、そこは透き通った空気と白い建物に囲まれた幻想的な街だった。
「ようこそ、地上からの客人、美月女王」
出迎えたのは、長い銀髪を持つ青年――アウリゼルの摂政、ルーファス公。
「王子は……?」と聞く間もなく、
「もふーっ!」
チグーが走り出し、誰かの足元に突進。
「美月ーっ!!」
空の民らしからぬテンションで手を振るのは――ゼファル王子本人だった。
「なぜもういるの!?」
「だって、美月が来るって聞いたら、先に来るに決まってるだろ?」
「外交って……そういうもんじゃないよ!?」
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◆ 空の国の悩み
会談の場で、ルーファス公が深刻な表情で口を開く。
「実は、雲土の質が年々落ちてきており、収穫量が減っているのです。
特に根菜類がうまく育たない……」
「地上と空、双方の栄養素を組み合わせる必要があるのかもしれませんわね」
リリアーナがつぶやく。
「つまり……空と土のハイブリッド農業!」
美月の目がきらりと光った。
「そして、その食材で作る――空と地をつなぐ薬膳ラーメン!」
クラリーチェが拳を握る。
「美月、そういうの、得意だよな!」
ゼファル王子は満面の笑みで背中を押す。
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◆ 新メニューの試作開始!
その日から、美月は空中農園の視察と地上の食材調達を並行して行うことに。
畑の間を飛び回るチグーは、空の民の子どもたちのアイドルになっていた。
「もふ外交、やっぱり万能……!」
「ねぇ、美月。次は“空もふ丼”とか作ってみない?」
「何そのもふ成分入り料理!?」