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第2章 第8話 「市民説明会、大盛況! ラーメンとともに未来を語ろう」

王都の中央広場に、巨大な特設ステージと屋台群が設置された日曜日の朝。

天気は快晴、空にはほわっとした雲。

そして地上には――どこまでも広がるラーメンの香り。

「美月様ー!屋台の準備完了です!」

「うんっ、ありがとう!……って、あれ?屋台、多くない?」

「ええ、予定の倍です!《ラーメンで休みの話を聞いてもらおう会》に、近隣各店舗が自発的に協力してくれたんですよ〜」

と、クラリーチェが胸を張る。

彼女の後ろには、「平和に生きて、休んで、ラーメン!」の横断幕を掲げた屋台たち。

「もはや、ただのラーメン祭じゃん!」

「でも……このくらい賑やかな方が、説明も入りやすいでしょ?」

リリアーナが、ちゃっかりラーメンの試食を口に運びながら、ニッコリ笑った。

「まさか……うちの広報担当が、食い逃げを?」

「失礼な!ちゃんと払い……そうになったわ!」

「そこまで言って払ってないの!?」

「うーん……庶民代表ですからっ!」

「ただの食いしん坊でしょ!」

そんなこんなでバタバタしているうちに、特設ステージ前には、すでに何百人もの市民たちが詰めかけていた。

子どもを連れた家族、制服姿の学生、腰の曲がったおばあちゃん――

皆それぞれラーメン片手に、今日の主役たちを待っていた。

「それでは……始めましょうか」

美月がマイクの前に立つと、ふわりと風が吹き、舞台の幕が揺れた。

「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます!」

\ワァァァーー!/

「いま、私たちは《週休3.5日制》という新しい働き方・生き方を考えています」

会場が、少しだけざわつく。

「休みが増えて、嬉しい。でも、お金や仕事は大丈夫? 家族の時間はどうなるの?」

美月は、一つひとつ丁寧に、やさしい声で語りかけた。

「私たちは、“すべてを完璧に”よりも、“みんなで笑顔になれるように”を選びたいんです」

「だから――この国の新しい合言葉は《90点でいい、30時間で満点》!」

\おおお……!?/

「余った時間で、おしゃべりして、ラーメン食べて、遊んで寝ましょう!たまには、何もしない日があっても、いいんです!」

その言葉に、あちこちから拍手が起き、クラリーチェの描いたイラストパンフを読んでいた子どもたちが「やったー!」と手をあげる。

「なお、例外職種の方々――医療・安全・魔物対策などは、待遇を改善しつつ人手を倍にします!」

「その分、必要な資金は……」

美月が手を挙げると、会場の後方から一斉にラーメンを持った人々が高らかに掲げた。

「美月薬膳拉麺グループ、世界五万店舗より、支援いたしますー!!」

\うおおおおー!!/

「そして、各部会代表の方々にも、改革の取り組みを話してもらいます。今日は、教育部会から……」

ステージに上がったのは、あのグレース先生。

「……正直、不安はあります。でも!」

「子どもたちが笑って登校して、先生たちが元気で、授業が楽しくなる――その未来が見えるなら、私はこの改革を応援します!」

\グレースさーん!!/

「そして、私たちの目指す国の指標は……《幸福度》です」

美月が最後にそう宣言した時、会場には自然と拍手の渦が広がっていた。

「さあ、それでは!このあとは《幸福度診断ブース》と《もふ外交ふれあいコーナー》です!」

「モフ〜!」

ちびグリズリーのチグーが、司会台の後ろから「モフ顔」をのぞかせると――

広場の子どもたちが一斉に駆け寄った。

「チグーだー!」「モフってー!!」

「……なんかもう、全部チグーが持っていった感ない?」

「女王の威厳ってどこ行ったんでしょうね……」

「ゼファル王子より人気かも……」

「ええーっ!?」

こうして、連合王国初の「市民説明会 with ラーメンフェスティバル」は、大盛況のうちに幕を閉じたのだった。

――次なる一手は、実際の「試験導入モデル地区」の選定と運営開始。

次回、第2章 第9話では、《週休3.5日制・実証モデルタウン》編!

現場のリアルと理想のギャップ、そしてまさかの“全力で休む選手権”まで登場!?


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