第106話薬膳VS毒膳!? 武器商人ギルドの挑戦状
東方エリアのラーメン支店に仕掛けられた“食中毒疑惑”は、すぐに濡れ衣であることが証明された。だが、武器商人ギルドはさらに過激な一手を打ってきた。
「――“毒膳ラーメン祭”ですって!?」
クラリーチェが机をバンッと叩く。
「“毒膳”……武器商人ギルドが主催のイベント。『薬膳なんて甘い、毒を喰らってこそ真の強者』だそうですわ」
リリアーナが資料をパラパラとめくりながら説明する。
「なんかもう、発想が時代逆行しすぎてるよね……」
美月は眉間にしわを寄せてため息をついた。
「ですが……放っておけませんわ」
リリアーナの声が低くなる。
「毒膳の噂で、薬膳の信用が落ちる可能性があります」
「それに……“毒膳”は本当に毒を使うらしいんです」
クラリーチェが青ざめる。
「試食用に支給された麺からも、痺れ成分が検出されました……!」
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◆潜入!毒膳ラーメン祭
「よし、行こう。乗り込むよ、毒膳ラーメン祭へ」
美月は決意を固めると、屋敷の一同を見回した。
「私が参加すれば、“本物の薬膳”がどういうものか示せる。ラーメンは、人を弱らせるためじゃなく、元気にするためにあるって!」
「よっ、言ってくれるぜ!」
ギルド長が背中をバシンと叩く。
「でも潜入って……変装ですか!?」
クラリーチェが目を輝かせる。
「わたし、美月様のメイク係をやりたいです!」
「なんでそんなテンション高いの!?」
美月はおでこに手を当てた。
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◆武器商人ギルドの刺客たち
毒膳ラーメン祭の会場は、闇市のような広場。
鎧を着た屈強な男たち、覆面の料理人たち、怪しい薬瓶が並ぶ屋台……その空気に美月たちは息をのんだ。
「いらっしゃい、薬膳姫」
暗がりから現れたのは、武器商人ギルドの幹部・ヴォルク。
細身の体に冷たい笑みを浮かべ、毒のような声でささやく。
「お前の薬膳外交は、世界の均衡を崩す。
病も争いもあるから、武器が売れるし、世界は回るんだ。……わかるか?」
「わからないね」
美月はきっぱり言い切った。
「ラーメンは、人を苦しめるためのものじゃない。そんな世界、私はいらない」
「ふふ……いい目だ」
ヴォルクが指を鳴らすと、毒膳ラーメンの鍋がずらりと並べられた。
「では、勝負だ。
“毒膳”が人を強くするか、“薬膳”が人を救うか……舌で決着をつけてもらおう」
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◆薬膳ラーメンで毒を解く!?
美月は持ち込んだ薬膳スパイスと食材を並べた。
「毒に勝つのは、ただ解毒するだけじゃない。体を立て直すラーメンを作る!」
「ぐるるっ!(チグー:毒草はあっち!)」
チグーの鼻が次々と毒食材を見つけていく。
「おお、チグー優秀! それ入れたら全員アウトだから避けて!」
クラリーチェがバタバタと材料を整理。
「よし、これで……完成!」
美月が仕上げたのは、透明な黄金スープの薬膳ラーメン。
毒素を分解するハーブと体を活性化させる根菜を練り込んだ特製麺、そして体力を奪わないさっぱりしたスープ。
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◆勝負の行方
審査員たちが、毒とは知らされず、攻撃力が上がるとうそをつかれて、毒膳を口にするが、顔をしかめて立ち上がる者も出てきた。
「……痺れる……力が……入らない……」
次に美月の薬膳ラーメンを口にした瞬間――
「体が、温かい……!」「痺れが引いた……!」
「これが……薬膳の力か……!」
湯気の向こうで歓声が沸き起こる。
湯気香メーターが「ラブ♡」「感謝♡」「元気♡」を示した。
「……ふん。だが、戦いはまだ続くぞ」
ヴォルクは悔しげに笑い、闇の中へ姿を消した。