第105話世界ラーメンサミットを守れ!美月と“麺の盾”の決意
王都・美月の屋敷地下にて――
臨時対策本部《薬膳世界平和促進対策本部》、通称“麺の盾”の初会合が行われていた。
「皆さん、集まってくれてありがとう。これから、ラーメンの平和を守るための……」
「なんだか、冒険者ギルドの討伐依頼みたいな始まりですわね」
クラリーチェが楽しそうにメモをとりながら口を挟む。
「でも重要なのは、ラーメンで世界を笑顔にする活動が、いま脅かされてるってこと」
リリアーナは真顔だ。珍しく冗談の一つもない。
「私が皆さんにお願いしたいのは、ラーメン外交の安全確保。そして、笑顔を壊そうとする者たちに“ラーメンの正義”を伝えることです」
「“ラーメンの正義”ってなんですか!?」
一瞬、室内にいた者たちが同時に振り返った。
そこにいたのは――
「遅れてすみませんっ!」
ひょこっと顔を出したのは、元冒険者の剣士・マルオだった。現在は「美月薬膳拉麺・西方支店」の副店長。
「呼ばれてもないのに来たのか」
ギルド長がため息をつく。
「だって、ラーメンと平和のためでしょ!? 僕が一肌脱がないでどうするんですか!」
「すばらしい熱意です!」
クラリーチェが拍手。
「人選、今からでも変更しますか……」
リリアーナの冷ややかな目。
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◆それぞれの決意
「私たち、遊びでラーメン作ってたわけじゃないのよ」
美月の声は、いつになく静かだった。
「塩分ひとつ、香りひとつにも、人の体と心が込められてる。戦争で壊れる日常を、ラーメンで取り戻したいって……ずっと思ってた」
「美月さま……」
クラリーチェがそっと手を握る。
「だから私は、どんなに危険があっても、ラーメンをやめない」
「うむ、良い表情だ」
ギルド長がうなずき、腕組みをする。
「それでこそ、美月。王様も、ギルドも、学院も、お前が必要だ。だからこそ、私たちが守る。体力は限界でも、信念は折らせない」
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◆そして、敵の策略――
だが、そんな矢先。
「報告です! 東方エリアのラーメン支店、食中毒疑惑の噂が流れています!」
「ありえない! 材料も衛生も徹底管理してるはず!」
「これは……ギルドの仕業かもしれません」
リリアーナがすぐに状況を整理し、手を振る。
「クラリーチェ、情報拡散を抑えるため、王国の報道関係に動いて。ギルド長は衛兵と連携、現地に“信頼できる検査官”を!」
「うわー、なんだか……戦争してるみたいですね」
マルオがぽつりと漏らした。
「戦争よ。ラーメンで人を救おうとする者と、武器で人を支配しようとする者の――」
美月の言葉に、一同が静かにうなずいた。