第104話ラーメンで平和を!?陰謀の香り漂う一杯――世界武器商人ギルドの影
「世界平和使者・美月の活動により、今年、戦争発生数は過去最小を記録しました!」
そんな朗報が舞い込んだ、王都の一室――。
「やったね、美月さん!」
クラリーチェがうれしそうに飛びつき、リリアーナは紅茶を注ぎながら静かにうなずいた。
「貴族会議でも、もはや“薬膳外交”は王国の柱ですわ。お父様も“麺の力は馬より強し”とおっしゃってましたの」
「そんなこと言ってたんだ……?」
美月はやや困惑した笑みを浮かべたが、その瞳にはしっかりとした光が宿っていた。
「でもね、そろそろ来ると思ってたの」
「……何がですか?」
リリアーナが眉をひそめる。
「“面白くない人たち”が、動き出すってことよ」
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◆翌朝――
「これは……挑発、ですね」
リリアーナが美月の机に置かれた黒い封筒を見て、渋い顔をする。
そこには、武器と銃弾のシンボルが刻印されていた。
「世界武器商人ギルド」――あらゆる戦争の裏に関わる存在。表向きは慈善団体、裏では武器と戦火を売る“戦争の影”。
「『最近、ラーメン屋が目立ちすぎだ』ですって……っ」
クラリーチェは封筒を握りしめ、怒りに震えていた。
「次の外交予定地だったエルグラ王国でも、急にラーメン関連の会合がキャンセルに。たぶん……ギルドの圧力です」
リリアーナの情報網が早速動いていた。
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◆それでもラーメンは止まらない!
「美月、どうする?」
ギルド長が現れた。普段の飄々とした笑顔はない。
「相手は本気だ。“偶然の暴動”や“事故”に見せかけた事件を、いくらでも起こせる。護衛を倍にしたいが……君が一番嫌がるだろうな」
「うん。ラーメンを食べに来てくれる人の前で、私だけ守られてるのって、なんか……ね」
「それが“死にかけ”のフラグというやつです!」
クラリーチェが両手をぶんぶん振りながら割り込んできた。
「でも……」
美月は真剣な表情で、屋敷の窓から遠くを見つめた。
「武器じゃなくて、食卓を囲む未来を選んでほしいの。ラーメンは、そのための合言葉だから」
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◆“麺の盾”結成!?
「では、こうしましょう!」
リリアーナがパチンと指を鳴らした。
「新たに“麺の盾”を結成。美月さんの活動を守る外交警護チームです!」
「名前が……じわじわ来ますわね」
クラリーチェが苦笑する。
「正式名称は《薬膳世界平和促進対策本部》ですわよ!」
「長い!」
「でも強いメンバーを集めましょう。外交にも強く、料理にも精通し、武術も心得ていて、そしてラーメンが好きな人たちを!」
「ハードル高っ!!」
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◆ついに火種が――
そんなある日、美月が演説を行う予定だった異国の広場で、突如として屋台が炎上。
幸いけが人は出なかったが、「安全性の問題」「異文化料理排除」などを理由に、武器商人ギルドが糸を引いたと噂される動きが次々と現れ始める――。