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OL魔女の仕事

また月曜日がやってきた。楽しかった休日の余韻を残しつつも、また新しい1週間が始まると思うと、少しだけ気が引き締まる。今週も忙しくなりそうだなと、朝の支度をしながら考えた。


「よし、今日も頑張ろう。」


自転車に乗って通勤途中、冷たい朝の空気が心地よい。仕事での忙しさをあまり苦に感じないのは、きっと私がこの仕事を嫌いではないからだろう。


最近、鈴木課長のことを考える時間が増えてきた。この前の商談を思い返すと、課長の冷静な判断がなければ、大きな問題になっていたかもしれない。目先の利益だけじゃなくて、相手のために行動することが最終的により良い結果につながる事もあるんだなと改めて思う。


―――――


オフィスに到着したのは、いつもより少し早い時間だった。鈴木課長から頼まれ、資料の最終確認を行うため早めに出社したのだ。


デスクに着くと、早速パソコンを立ち上げて、先週に準備していた資料を再確認する。間違いがないか、細かいところまでチェックする作業は地味で時間がかかるが、やり終えた後の達成感がたまらない。自分の手で仕上げたものが形になる瞬間が、私は好きだった。


「おはよう、清水さん。」


「おはようございます、課長。」


鈴木課長が少し遅れて出社し、オフィスに入ってきた。私のデスクに歩み寄ると、さっと資料に目を通して確認を始める。忙しそうな顔をしているが、やはりどこか余裕を感じさせるところが、鈴木課長らしい。


「これで間違いなさそうだな。ありがとう、清水さん。」


その一言に、思わず頬が緩んだ。


「いえ、こちらこそ。いつも気を使っていただいて…。」


「それにしても、この前の商談がうまくいったのは本当に大きかったな。」


鈴木課長は、資料に目を通しながら、何かを考えているようだった。そしてふと私の方に顔を向ける。


「商談の件、君が気づいてくれたから、あの後すぐに病院に行っていただいて事なきを得たそうだ。本当に助かったよ。」


その言葉に、私は思わず顔を上げた。仕事の中で、自分が誰かの役に立っていると実感できる瞬間。それがたとえ些細なことであっても、やはり嬉しい。


「ありがとうございます。私、少しでもお役に立てたなら本当に嬉しいです。」


少し照れくさいけれど、心からの言葉が出てきた。鈴木課長は、私の気持ちをちゃんと受け止めてくれたようで、少し微笑んだ。


「それにしても、清水さんは感覚が鋭いよね。あの部長の体調の件も、君が気づいてくれなかったら…。」


「いえ、私もただの勘ですし…でも、気づいてよかったと思っています。」


少し謙遜しながら答えると、鈴木課長は再びふっと笑顔を見せてくれた。その笑顔が、何となくいつもより少し柔らかく感じられる。


と、そんな時。鈴木課長は、手に持っていた資料を何気なく手で払った。小さな仕草だったが、何か不思議な…ほんの小さな違和感。あの手の動き…まるで空気がゆらぐような…そんな感じがした。


「課長、今、何か…?」


「え? ああ、いや、気にしないで。少しホコリが付いていただけ。」


鈴木課長はすぐにそう言って、もう一度資料に目を戻した。その表情は、まるで何もなかったかのようだったが、私にはなぜだかその仕草が気になった。


―――――


午前中、忙しいオフィスの中でも、鈴木課長の気遣いは変わらなかった。どれだけ忙しい時でも、定期的に部下に声をかけ、問題が起こってないか常に気を配っている。


「鈴木課長、こちら資料で誤ってると思われる部分があるんですが…。」


私が資料を持って声をかけると、鈴木課長はすぐに顔を上げた。


「お疲れ、清水さん。どこか教えてもらえる?」


鈴木課長に資料を見せながら説明をした後、いくつかの意見を交わしながら対応方法を決めていく。私はメモを取りながら修正方法をイメージした。その内容なら今日中に対処できそう。私は頭の中で今日の予定を組み立てていった。


「清水さん、君の意見はいつも的確だね。これからも頼りにしている。」


「ありがとうございます。私も頑張ります。」


―――――


夕方、ようやく今日の仕事が終わる。オフィスの灯りが少しずつ消え始め、静けさが戻ってくる頃、私は一人で公園に向かう。今日も、マメ太が待っている場所に。月曜の疲れを癒すように、猫用フードを取り出すと、黒ネコはすぐにやってきた。


「マメ太、今日もお疲れ様。」


フードをあげると、マメ太は喜んで食べ始めた。私はただその姿を見守りながら、ふと考える。


「鈴木課長のこと、考えることが最近増えたな…。」


そんな思いが頭をよぎったけど、その理由まではたどり着かない。そう言えば、朝のあの手の動き…なんで一瞬違和感を感じたんだろう。ふと疑問に思ったが、きっと気のせいだろうとすぐに思い直した。


明日もきっと、同じように忙しい一日が待っている。でも、私はそれに向かって全力で走ることができる気がする。何かに守られているような、そんな気がして。


明日もまた、頑張ろう。

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