第44話 飛び出してきたのは
塔の中は静かだった。
多分だけど、皆、陽動部隊の方に駆り出されているんだと思う。
「ひとまず階段を探しましょう。まだ人がいるかもしれないから慎重に」
「ええ」
外見からして塔はそこまで広くない。
あっさりと階段は見つかった。
一階部分には誰もいないみたいだね。
このまま順調にお姫様のところまでたどり着くといいんだけど。
そのまま、5階まで上がったところで。
「待て、敵だ」
セシルさんが立ち止まった。
見ると、扉の前に立っている兵士がいる。
警戒するように見渡している。
「おそらくあそこが目的の部屋だろう」
流石に部屋に一人残してた感じかな?
斧と槍が合体したような武器を持っていて強そう。
『ハルバード持ちか』
『武器で敵の強さ違うから結構わかりやすかったよね』
『ハルバード持ちは兵士の中でもかなり強かった覚えがある』
どうやらあの槍はハルバードっていうらしい?
「あいつ強いな」
ヴェラさんが兵士を睨んでいる。
でも、なんかちょっと楽しそう?
「ヴェラ、後で存分に戦う機会はあげるからちょっと待ってて」
今にも突っ込んでいきそうなヴェラさんをジニーさんが抑えていた。
「しかしどうする、近づけば間違いなく戦闘になるぞ」
強そうなのは遠慮したいけど、避けては通れなさそうなんだよね。
きっと3人なら負けないとは思うんだけど、時間をかけて人が戻ってきたら困るなぁ。
そんなことを考えて、ちらっと階段下を見た。
その時。
「りゃぁあああああっ!」
突然どこからとも無く叫び声が聞こえてきて、
ドン!
という音と「ウグッ!」といううめき声。
「何!?」
思わず叫んでしまった。
見ると、さっきまで閉まっていたはずのドアがない。
そして、そのドアに押しつぶされる兵士とドアの上に乗っている金髪の女の子。
えー……これ、どういう状況。
女の子は立ち上がる様子がない。
ちらっとジニーさんを見たけど、ジニーさんが固まっている。
これは私が行かなきゃならない感じ?
「えっと、大丈夫……ですか?」
恐る恐る近寄って声をかけてみた。
「大丈夫なわけないじゃない!」
「わっ!」
ガバっと起き上がって私に詰め寄ってくる女の子。
「ここ数日の食事はパンだけ。ダイエットにはいいかなぁなんて思ってたけど、これ以上続いたら背中とお腹がくっつくわよ!」
私の肩を掴んでガタガタされる。
「えっ、ちょ、落ち着いてくださっ」
「いい! 人間にはね! 適度な運動と食事が必要なのよ! お兄様が言っていたもの間違いないわ!」
女の子の勢いが凄い。
「こんなところに閉じ込められて、運動もできないし食事もできない、私が倒れたら大変なことになるわよ!」
いいの!? と私の顔を覗き込む女の子は首をかしげた。
「ってあれ? あなたはどちらさまかしら?」
やっと女の子の勢いが収まった。
『すげぇ勢いだった』
『よっぽど限界だったんだろうなぁ』
『見た目は可愛いのに』
やっと一息つけた。
「えっと、我々はですね……」
「わかった! あなたたち、お兄様の敵ね!」
はぁ?
「こんなところで捕まってなんていられないわ!」
叫ぶと走り出そうとする女の子。
だけど、すぐにその歩みは止まり、しゃがみこんでしまった。
「……うぅ……お腹すいた……」
これはいわゆる、お腹が空いて力が出ない状態なのかな?
あー、もう。放置するわけにはいかないよね。
「えっと、もし良かったらこれどうぞ」
インベントリから取り出したのは、常備しているパン。
今回のやつはそれにウルフ肉のステーキと野菜を挟んだ自信作だ。
「くっ、敵のほどこしは……美味しそう……食べていいの?」
強気な表情でこっちを睨んできた女の子だったが、私のパンを見てすぐに表情を改めた。
「ええ、いいですよ」
どうぞ、と差し出すと、すぐさまそのパンにかじりついた。
「美味しい! 野菜とお肉とのバランスが絶妙だわっ!」
凄い早口で言いながら食べていく。あっという間になくなった。
女の子は悲しそうに何も持っていない手を見ている。
「えっとこれも」
「もらうわ!」
また取り出して差し出したらすぐに受け取って食べだした。
……なんか前にも同じようなことなかった?
『ロナちゃんの事思い出した』
『元気にしとるかなぁ』
『また餌付けしておられるw』
ロナさん元気にしてるかなぁ。
しばらく女の子が食べるのを見ていたんだけど。
そういえば、ジニーさん達が静かだなぁ。
振り返ってみると、ジニーさんたちは、扉を見張っていた兵士を縛り上げていた。
あ、これ女の子は私に任せたみたいな感じですかね?
確かに、なんか凄い放っておけない感があるんだけど。
「ふぅ、久しぶりに満足したわ」
女の子が満足そうに口をハンカチで拭いている。
「あなた!」
女の子は立ち上がって私を指差す。
「はい?」
「あなた! 私のお友達にしてあげてもいいわよっ!」
………………
「はい?」
「だからお友達よ! これから私達はお友達よ! 仲良くしましょう!」
急にお友達認定されてしまった。
「えっと、お友達はいいんですけど、私達お互いの名前も知らないわけで……」
いや、まぁ、もう予想はついているんだけど。
「あら? 私の事を知らないの?」
女の子は不思議そうに首をかしげたけど、気を取り直して腰に手を当てた。
「私の名前はキャロライン・ド・アルダン! この国の第一王女ですわ!」
女の子は胸を張って宣言した。




