第16話 冒険者ギルドマスター
「冒険者ギルドのマスターをしております、レジーナですわ」
数日後、私は冒険者ギルドのマスターに挨拶をしていた。
「この度は、冒険者ギルドに溜まっていた納品依頼を大量に受けてくださり、感謝いたしますわ」
要件は、街の時と同じように依頼を片付けたことに対するお礼みたい。
「いえ、自分のためにやったことですので」
2回目ともなると、こうなることは予想がついていたというか。
やっぱりどのギルドでも依頼が溜まって困ってたりするのかもね。
「聞けば、モーリスさんのところで活動されているとのお話。優秀な錬金術師さんが来てくださってとてもありがたいですわ」
うん?
「モーリスさんをご存知なんですか?」
モーリスさんは錬金術師だし、冒険者ギルドとは何の関係もないと思うんだけど。
あ、私みたいに冒険者ギルドに納品しに来てたとかかな?
「確かに、モーリスさんは錬金術師ですが、自分で素材を取りに行ったりされていましたので、冒険者ギルドではよくお会いしましたの」
「そうなんですか」
へぇ、モーリスさんそんなことしてたんだ。
優秀な人だろうとは思っていたけど、冒険者みたいな活動までしていたんだ。
ひょっとして私と同じように自分で作ったアイテムを使ってレベル上げとかもしてたのかも?
いつか聞いてみようっと。
「とはいえ、お歳ということで引退されましたので、お見かけすることはなくなりましたが、それに伴って依頼が溜まっていく一方で困っていましたのよ」
レジーナさんは、頬に手を当てて困ったような笑みを浮かべた。
あ、ちなみに、レジーナさんは女性だ。
年齢はわからないけど、30代くらい? のご婦人という感じの人だ。
『レジーナさんもいいよなぁ……』
『ミナリアさん、レジーナさんの2大巨塔って感じだったよな』
『どっちのファンかで派閥別れてたよなぁ』
『なお、アリスちゃんは殿堂入りしている模様』
『それな』
視聴者さんたちも変な盛り上がり方をしている。
そういえば、街の方のギルドマスターは見たことない人もいたのに、王都のギルドマスターは皆知っているんだね。
「というわけで、アリスさんにはお礼をしたいのですが……」
何が良いですか? と聞かれたんだけど。
「うーん、お金はあまり……」
今欲しいものはイベントが進むための貢献度なので、それに関係する何かなんだけど。
というか、今これってイベント進んでいる状態なのかな?
『そんなアリスちゃんにお知らせ』
『多分だけど、一回多分探索行かないと進めない思う』
『納品依頼だけだとイベント進まなかったはず』
『多分だけど、戦える人材だと認識させる必要があるっていう感じだと思う』
GM『それで合ってます』
『GMwwww』
あ、そういうことなんだ。
探索かぁ、アイテムの素材採取がてらで行くのはいいけど、一人じゃちょっと不安だなぁ。
そうだ、それじゃあ、お礼として探索に付き合ってくれる人紹介してもらえないかな?
ロナさんみたいな人。
「あの、私もモーリスさんみたいに、近くに探索に行こうと思っているんですけど」
「あらまぁ」
私がそう言うと、レジーナさんは驚いたように口を開けた。
「アリスさんは本当に優秀ですのね。それじゃあ、いい素材が取れる場所をご紹介しましょうか?」
「はい、お願いします。それと……」
「わかっていますわ。優秀な護衛を用意いたしますわ」
話が早い! すごく助かる。
「モーリスさんも一人じゃなかったんですか?」
「ええ、仲の良かった冒険者達と探索に行っていましたわ。私もご一緒したことありますのよ」
へぇ……うん?
レジーナさんっていくつ?
あ、いや、ちょっと待って、モーリスさんが最近まで探索出ていたとするとそこまで不思議じゃないのかな?
でも、なにか違和感が……
「なにか?」
「あ、いえ、何でもないですよ」
なにかつついてはいけない穴を見つけた気分だ。
「……」
「……」
思わず黙ってしまった。えっと、話題話題。
あ、そうだ。
「そういえば、私のいた街の冒険者ギルドからこれを預かってきました」
「あ、あらなんですの?」
「えっと、確か、紹介状? って聞いてます」
「アリスさんのいた街はどこかしら?」
「あ、えっと山の向こうの」
「山向こうというと、ユアンヌですの?」
「あ、多分それです」
そういえば、そんな名前だったと思う。
いや、忘れてたわけじゃないよ?
単に街から出るつもりあんまりなかったから、馴染みがなかっただけで……
『そういえば、そんな名前だったな』
『大体、話題に出すときも最初の街だしな』
『この国だと、街か王都だけだもんな』
視聴者さん達も似たようなものらしい。
……まぁ、これからは名前ちゃんと覚えておこう。
「ユアンヌの冒険者ギルドというとグレッグかしら?」
レジーナさんは私の手紙を受け取り読み始めた。
どんな内容なんだろう?
流石に、商業ギルドの時みたいに便宜を図れみたいな内容じゃないとは思うんだけど。
「うーん?」
レジーナさんは首を捻っている。
「アリスさん? ここに書いてある内容は正しいんですの?」
「はい?」
レジーナさんが手紙を渡してきた。内容を確認する。
そこに書かれていたのは、前に街の防衛をした時に、作戦の立案をし、さらに最前線に立って、弓と道具を使ってボスの討伐にと大活躍したこと。
優秀な人材なので、丁重に扱って欲しい云々が書かれていた。
「アリスさんは錬金術師ではなかったかしら? それなのに、最前線でボス討伐?」
レジーナさんは困惑している様子だ。
「えっと、一応……自分の活躍というよりは皆の協力の元という感じですが」
ロナさんや街の冒険者さんたちがいたからどうにかできた感じだし。
「そうなの……まぁ、あのグレッグが嘘を言うとは思えませんし。きっと本当のことなのでしょう」
納得しつつも、なにか悩んでいるようなレジーナさん。
「アリスさん、次の探索が終わったらお時間いただけるかしら? ご相談したいことがありますの」
「あ、はい。わかりました」
「よろしくお願いしますわね」
相談? なんだろう?




