第6話 王都に向けて出発
「これが魔除けの香水……」
道具作りはすぐに終えた。
作り上げたビンを揺らして中身の液体をゆらゆらする。
普通に買ったビンなのに、何故か装飾がついているのが不思議。
『魔除けの香水は序盤の必須アイテムだよな』
『戦闘避けたい時もそれなりにあるからな』
『流石に戦闘中には使えないけどね』
『効果は30分くらいしかないから多めに用意しておくとよし』
30分かぁ、一個だと心もとない感じだね。
でも、素材は沢山買ってきたから、いっぱい作ろう。
「それに、回復アイテムとか爆弾とかも沢山作らないとだね」
この間の戦いで爆弾は全部使い切っちゃったし。
また素材集めからだよ。
あの亀と戦うのめんどくさいんだよなぁ。
……明日から頑張ろう。
結局、満足の行く準備が出来上がるまで5日ほどかかった。
やっぱり亀はめんどくさかったよ。
というわけで、今日は出発だ。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「ええ、留守の間は任せて」
色々な人達に挨拶を済ませた後に、商業ギルドで家の鍵をリーズさんに預ける。
私が留守の間の管理をリーズさんにお願いすることにしている。
どのくらい時間かかるかわからないからね。
「それじゃあ、行ってきます」
無事に預けられたので出発しようと思ったんだけど。
「あ、ちょっと待って」
リーズさんに呼び止められた。
「ちょっとついてきてもらっていいかしら? 渡したいものがあるの」
「えっ? はい。いいですけど」
急いでいるわけではないから時間はある。
リーズさんに着いて、商業ギルドの裏に回る。
そこには、馬が一頭。
「あげるわ」
「えっ?」
あげる? えっ?
「あげるって、この馬を……ですか?」
「ええ、王都に行くのに足が必要でしょう?」
そりゃ、馬がある方が早く着くけど。
そんな気軽にもらっちゃっていいの?
「これも投資の一つよ。アリスちゃんの移動が速くなればそれだけ早くこの街に帰ってこれるでしょ?」
そうは言うけど、この馬凄い立派そうだし、安くないよね?
「だから、連れて行って」
リーズさんの表情には何を言っても揺らがない決意が見える。
これは遠慮しても駄目そう。
『ちなみに、馬はインベントリに入る』
『生物ごと入るっていう謎システムだよな』
『はたして、インベントリに入っている間、馬はどうなっているのか』
『き、きっと人造馬なんだよ』
『それはそれで闇深だぞw』
なんか、凄いこと聞いたなぁ。
改めて、この世界ゲームの世界なんだなぁということを思い知らされた気分だよ。
「それじゃあ、いただきますね」
旅する上での障害もないみたいなので受け取ることにした。
えっと、試しに。
「あ、本当にインベントリに入るんだ……」
インベントリには馬という項目。
ほんと不思議現象だなぁ。
「あとこれも」
リーズさんが紙を差し出してきた。
「これは?」
「王都の商業ギルドへの紹介状よ。アリスちゃんをよろしくってね」
あ、それはありがたい。
「それから、これはグレッグから。冒険者ギルドへの紹介状らしいわよ」
冒険者ギルドの方まで。
新天地での挨拶は重要だからね。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
ありがく活用させてもらうとしよう。
「……それじゃあ、行ってきます」
「ええ、いってらっしゃい」
リーズさんに見送られて街を出た。
「はー、そういえばひとりで街の外に出るのって久々かも?」
『イベントもあったからね』
『それにロナちゃんも付いてきてくれたからね』
『王都に出かけるって行ったときのロナちゃん面白かった』
『固まってたからな』
『ご飯あげたら回復したのには笑った』
『餌付けした弊害よ』
あー、ロナさんね。
リーズさんに会う前に挨拶はしてきたけど、事前に言っておいたのに悲しそうな顔をしたまま私の手を離さなくて困ったよ。
持っていた食料をあげたら、見送ってくれたけど。
あれは、食べ物が恋しいのか私との別れを悲しんでくれたのか……
両方だと思っておこう。
『そういえば馬には乗らんの?』
「あー、そうですね。なんとなく歩いてましたけど馬の方が速いですね」
歩いて街を出たからそのまま歩いてしまった。
インベントリから馬を取り出す。
ヒヒンと馬が鳴く。
ちょっと心配だったんだけど、本当に大丈夫らしい。
『アリスちゃん馬乗れるの?』
『戦闘職だと補正とかある職業とかもあるけど生産職にはないよね』
あー、そういえば、全然考えてなかったなぁ。
とりあえず、チャレンジ。
えっと……思ったより高い……
『近くの岩とかから乗ったほうがいいよ』
『鐙に脚かけてまたぐ感じ』
『変に動いたりしないから落ち着けば大丈夫』
『がんばえー』
視聴者さんからの応援を受けて無事に乗ることに成功した。
「うわぁ、高い……」
乗ってわかる視点の高さ。
『おめー』
『手綱引けば思った通りに動くよ』
『その辺り現実よりかなり楽よね』
なるほど、言われたとおりに手綱を引いてみると、ちゃんと前進した。
「おー」
パカパカと進む馬に感動してしまった。
『体前にかがめると速度も上がるよ』
「おっ、おお、速い!」
歩くのと変わらなかった速度だったのが、徐々に速くなっていく。
これどこまで速くなるんだろう?
『ちなみに、壁とかに激突したらダメージ食らうから注意』
『HP全損だからいきなり死んだりはしないけどね』
『全損したところに魔物襲撃とかあるから……』
『やったことあるわ……』
そうなんだ、それじゃあ、あんまり速度を上げすぎたりしないようにしつつ馬乗りを楽しもうかな。




