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【視聴者さん】転生先はVRMMOのNPC!?転生して最弱の錬金術師になった私はゲームの中からVtuberとして配信します!【助けて】  作者: 猫月九日
最初の街編

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第48話 私は

 ゴブリンキャプテンを倒した。

 頭がそれを理解するのに時間がかかった。


「……ふぅ……はぁ……」


 息を吐いて吸う。

 そうしてようやく、倒した実感が湧いてきた。


 やった倒したんだ!

 そうやって喜ぶ、気力がない。

 緊張が抜けたせいか、膝から崩れ落ちてしまった。


『アリスちゃん!?』

『疲れが溜まったんだろう』

『あんだけ、活躍したからなぁ』

『最初から最後までずっと活躍してたからなぁ』


 あー、疲れたなぁ。

 でも、これでようやく少しは休めそうだ。

 なんか忘れてる気がするけど。


『倒したのはいいけど、けど……』

『わかる、このままだとまずいよな』

『アリスちゃん、アリスちゃん、早く逃げよう』


 うん? 逃げる?

 何から?


『四天王まだおるで!』

『四天王から攻撃来るから早く!』


 あ、そっか。そんなのいたっけ。

 上を見上げる。


「ふふっ、所詮はゴブリンでしたか」


 四天王はまだ、空中に浮かんでいた。


「まぁ、私としても楽しめましたし、今日のところはこのくらいにしましょう」


 そう言うと、四天王はなにやら、手を上げた。


「お土産だけ置いていきます。生き残れたものだけまた会いましょう」


 四天王が掲げた手から空中に向かってなにやら放たれた。


『まずい! 来るぞ!』

『攻撃予測……わからんね!』

『街まで入れば当たらないはず!』


 四天王が霧のようになって消える。

 次の瞬間、


 ドゴォン!!


 凄い音を立てて、なにやら降ってきた。


「何だ! 雷だ!」


 雷?


「敵の攻撃だ! 早く避難するんだ!」


 冒険者、ギルマスが急いで避難を始める。

 そうか、四天王がラストアタックをしてくるんだっけ。

 私も逃げなきゃ。


「……あれ?」


 逃げようと立ち上がろうとしたんだけど、足が動かない。


『アリスちゃん!?』

『疲労が!?』

『くっそ、またトラウマが!』


 足も動かないし、頭も朦朧としている。

 少し、緊張が切れるのが早すぎたかな。


 雷が落ちる中、動けない私。

 しかし、そんな私に駆け寄ってきてくれる人がいた。


「……アリス!」


「……ロナさん?」


 ロナさんだった。

 どうやら一度逃げた後、私が動いていないことに気がつき走ってきたらしく、息を切らしている。


「……すぐ逃げる!」


 動けないということをわかったらしく、私に肩を貸してくれる。


「ありがとう……ございます」


『やっぱりロナちゃん頼りになるな』

『これで……いや、まだ、安心は早いぞ!』

『せやせや、ロナちゃんNPCだから攻撃予測見えないはず』

『くっそ、俺らも放送だから何もわからねぇ』

『当たらない事を祈るしか』


 ロナさんが私を引くように動かしてくれる。


「……この方が早い」


「えっ?」


 ロナさんは、しばらくそのまま進んだ後、一度私の肩から手を離す。

 そして、そのまま、私を両手で抱える。

 これは、いわゆる。


『お姫様抱っこ!?』

『てぇてぇ……、って言ってる場合じゃないけど、てぇてぇ』

『いろんな意味で目が離せねぇ』


 お姫様抱っこをしたまま、ロナさんは門に走っていく。

 その間も、雷は降ってきている。


 どこに降ってくるかまったくわからない。

 でも、これが当たったらまずいということは、アリスが証明している。

 今は更に、ロナさんも犠牲になる。


「……っ!」


『危ない!!』


 雷が私達のすぐ前に落ちてきた。

 衝撃で吹き飛ばされるロナさんと私。

 眼の前が真っ白になった。



「ありがとう、アリスちゃん!」


 一人の男の人と一人の女の子。

 女の子の方には見覚えがある。

 金髪に碧眼、アリスだ。

 去っていく、男の人を見送り、また別の人の元に駆けつける。


「大丈夫! はい、これポーションだよ!」


 倒れそうになっている人にポーションを渡す。

 そんな事を繰り返している。

 場面は戦場だ。

 多くの人がゴブリンと戦っている。

 そんな中をアリスは一人、駆け回ってポーションを配る。

 これは、視聴者さんが言ってた、四天王戦かな?


 このアリス、私と見た目は全く同じなのに、何か違う。

 何が違うんだろう。

 わからない。



 視界が変わった。



「すまない」


 誰かに話しかけられている。

 聞き覚えのある懐かしい声だ。


「ううん、大丈夫。お父さんも忙しいのわかってるから」


 そうあれは、お父さんの声だ。

 お父さんは、お母さんが家を出ていった後、一人で私のことを育ててくれた。

 幼い時は、寂しかったけど、それでも私に愛情を注いでくれているのはわかっている。


「しかし、卒業式くらい……」


「大丈夫だって、一人でなんとかなるからさ。ほら、時間ないんでしょ。行った行った」


 父は、何度も振り返って去っていく。

 それを笑顔で見送る。

 これは、中学の卒業式の日だったかな?

 私の意識では、そんなに昔のことではないはずなのに凄く懐かしく感じる。

 思い返していると、また視界が真っ白になった。



「アリス!」


 肩を揺すられる感覚で意識が戻った。


「アリス! 大丈夫!?」


 ロナさんが、私の事を見ていた。


「はい……」


 そうか、私は、目の前に落ちてきた雷で意識を失っていたらしい。


「よかった、それじゃあ、逃げよう」


 見ると、ロナさんが傷だらけになっていた。

 傷はHPがカバーしてくれるので傷を負うことはない。

 つまり、ロナさんのHPは既になくなっているということだ。


 それでも、ロナさんは再び私を抱え上げ、逃げようとする。

 私もロナさんも雷が落ちる予測が見えない。

 そんな中を街まで逃げるのは難しい。


 ……なんで私には予測が見えないの?


 ふと、疑問に思った。

 予測はプレイヤーならば誰でも見られるはず。

 アリスはNPCだ、当然見えないだろう。


 でも、私は、アリスであってアリスじゃない。

 さっきの走馬灯のような映像を思い返す。

 私は、アリスであると同時に生きた人間だ。


 だったら、私に見えないはずがない。


「私は人間だ」


 つぶやいた瞬間、急に視界が開けた。

 見える。


「ロナさん、あっちにお願いします」


「……ん」


 ロナさんが進もうとした先に円の範囲が見える。

 それを避けて進むよう指示をして、通り抜けた時。

 円の範囲に、雷が落ちてきた。


「次は向こうです」


「んっ!」


 雷が落ちてくる場所がわかる。

 当たり前だ、私はNPCじゃない、人間だ。

 だから、プレイヤーなら見える予測が見えるのは当然だ。



 ロナさんにお願いをして、進む。


「ついた」


 ようやく、街の中に入ってくることができた。

 ロナさんが、私の事を下ろしてくれる。

 振り返って、ロナさんを見ると見つめ返してくれた。


「……生き残った」


「生き残りましたね」


 そう言って、私たちは笑いあった。



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