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第1話 これって異世界転生?

 私はいったい誰だろう?


 私の名前はアリス。

 数日前に、祝福を受けて錬金術師になった。

 祝福とはその年に15歳になる者が教会で神様から職業の適正を頂くものだ。

 もちろん、適正がない職業に就くこともできるけど、適正がある方が能力が高くなるから、多くの人がそのままその職業に就く。


 私も祝福を受けて、無事に錬金術師になることができた。

 死んだ両親も錬金術師だったこともあるし、職業自体に不満はない。

 家に埃被っていた道具もあるからすぐにでも働くことができる。

 街の商業ギルドに挨拶をした時も、久しぶりの錬金術師ということで期待しているとの言葉を頂いた。


 ……記憶に問題はない。

 ここ数日のことも、両親が生きていた時のこともちゃんと思い出せる。

 嬉しかったこと、悲しかったこと、怖かったこと、ちゃんと全部覚えている。

 でも……違和感が消えてくれない。


 私はいったい誰だろう?


 そんな違和感でせっかくの錬金術にも集中できない。

 できたのは、一番簡単な初級ポーションだけ。

 その初級ポーションも、やってきた知り合いが。


「どうせ俺しか使うやついねぇだろうし、もらってやるよ」


 と、言って持っていってしまった。

 お金はもらっていない。

 そりゃ、初級ポーションなんて安物だろうけどさ、勝手に持っていっちゃうのは酷くない?

 それってただの泥棒じゃない?


 思い出すとちょっとした怒りと悲しみが湧き上がってくるけれど、知り合いのことは置いておいて、もうちょっと考えてみる。

 私は錬金術師のアリスだ、間違いない。

 だけど、祝福を受けてから、私の中に何かがある。

 かれこれ7日間もずっとだ。

 だから、きっとこの感覚はきっと間違いじゃないんだろう。

 つまり、私には、


「別の人の記憶がある?」


 そうつぶやいた瞬間、まるで天啓を受けたかのように見覚えのない光景が頭をよぎる。

 大きな建物に毎日通った。私は高校生だった。

 学校では友人と部活を楽しんだ。弓道部だった。

 家で本を読んでいる私。ちょっとオタク気味だった。

 そして、男の人の顔。お父さん……たったひとりの家族。

 それ以外にもいろんな光景が一気に私の中になだれ込んでくる。


「うっ……」


 思わずふらついてしまう身体のなんとか支える。

 情報量が多すぎて、身体がエラーを吐いている。

 それをなんとか処理していき、やがてわかった。


「そうか、私は日本の高校生だった」


 どうやら私は異世界転生? したみたいだ。



 はっきりと自覚したおかげで、感じていた違和感は大分収まった。

 でも、


「名前……思い出せないな?」


 アリス。それは今の私の名前だ。

 さっき思い出した、前世の私にも名前があるはず、だけど、それが思い出せない。

 これじゃあ、結局私が誰かわからないままだ。

 そして、それ以前に、


「異世界転生? ってことは私死んだの?」


 記憶によると、私はまだ高校生だったはず。

 前の自分はどうして死んだんだろう?

 思い返してみても、普通に生活していた記憶しかない。


「トラックに跳ねられたとか?」


 定番だけど、それだったら神様とやらにチートを与えられていてもいい気がする。

 チート……心当たりはまったくない。

 できれば錬金術に活かせるやつがいいんだけど。

 あ、そうだ。


「ステータス」


 つぶやくと、透明な板のようなものが表示される。

 この世界では祝福を受けたものならば皆使える魔法だ。


「これも、考えてみたら異世界転生の定番ではあるよね?」


 表示される私のステータス。

 そこには、職業錬金術師の文字がある。

 それ以外のステータスが非常に低いことには今は目をつぶっておこう。


「うーん、ステータスが見れるってことは何かのゲームだったりするのかな?」


 思い返してみても、当てはまるようなゲームは思い当たらない。

 そもそも、私がやっていたのは主に女子向けに作られたゲームだから表示されるステータスも全く違う。

 祝福の時にPOWが力でDEXが器用さみたいな説明は受けたけど、私が知っているゲームはもうちょっと学力とか魅力とかだったから。

 つまり、きっとゲームの世界だったとしても、RPGとかそういう世界なんだろう。

 けど、それ以外の情報は……


「あれ? こんなマークあったっけ?」


 私のステータスの画面になにやら見慣れないマークがある。

 前に見た時はこんなのなかった気がするけど。


「Live? 住む? じゃないよね? 生きる? かな?」


 そりゃ、私は生きているからLive状態ではあるだろうけど、いやしかしそのマークはグレー状態だ。

 アリスは死んではないはずだから、生きるだったらおかしいことになってしまう。


「うーん、とりあえず、押してみよう」


 何事もやってから考えるに限る。

 押して見ると、ポチッと音がしてメッセージが表示された。

 なになに?


「配信を開始しますか?」


 配信? あ、ひょっとしてLiveって生放送とかのライブのことかな?

 前世の頃もよく、インターネットで生放送とか見ていた。

 もっとも、私は見る専門だったけど。

 でも、生放送? 明らかにこの世界の言葉じゃないよね?

 祝福の説明をしてくれた神官さんも全然そんな事言ってなかったし。


 うーん、どうしよう。

 ……ちょっと怖いけど、


「まぁ、やってみよう」


 後悔はやってからするもの。

 メッセージにOKボタンを押すことで返す。

 再びメッセージが流れた。


「配信を開始します」



お読みいただきありがとうございます。

本日3話投稿のうちの2話目になります。

3話目は17時頃投稿予定です。

ちょっとでも続き気になった方はブックマークと評価をよろしくお願いします。

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