第0話 アリスは激怒した
アリスは激怒した。必ず、かの腐敗堕落の自称勇者を除かねばならぬと決意した。
アリスには魔王討伐の事情はわからぬ。
アリスはただの街の錬金術師である。
薬を作り、売って何とか暮らしてきた。
しかし、近頃の魔王に対しては、人一倍敏感であった。
今日の昼ごろ、自称勇者の旅人はアリスの元を訪れ、こう言った。
「アリスちゃん、今日も駄目だったよー、慰めてー」
旅人は国に認められた唯一の職業。
悪逆の魔王を倒すべく旅立つ、そのはずだったのだが。
「でも俺、まだレベル1だからさぁ」
自称勇者はそんなことを言って、アリスに媚を売る。
それを見たアリスは、
「お前に売るものはない」
自称勇者を店から追い出すのであった。
重ねて言おう、アリスは街の錬金術師である。
それも、魔王は愚か、近くにいる魔物にすら苦戦する、見習いの錬金術師である。
しかし、アリスには秘策があった。
「という感じで、これから四天王戦に向けた作戦を考えたいと思います」
誰ともなく言うアリス。
しかし、どこからともなく、声が返ってくる。
『なるほど、無理ゲーか』
『勇者に対する反応ワロタwww』
『世界観作り込みすぎだろ』
『そういう設定の放送ということは理解した』
続々と流れてくる声。
「いや、設定じゃないんだけど」
流れてくる視聴者のコメントに配信者アリスはため息をついた。
お読みいただきありがとうございます。
プロローグになります。
1話は今日の12時頃投稿になっていますのでちょっとでも、続きが気になった方はブックマークと評価をよろしくお願いします。