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金色の羊はカニの味

 朝食を食べに昨日同様一階のビュッフェレストランに行くと、カニで溢れていた。

 ビュッフェボードにはカニのフルコースと言わんばかりの料理が並んでおり、聞こえてくる会話もカニという単語が混じってばかり。

 値段はかからないとはいえど、カニを当分見たくなかった私はレストランから逃げ出した。

 エレベータに乗って上階のレストランコーナーへ。

「分厚いステーキお願いします」

 逃げるようにお金も気にせずステーキを頼んだ。


 朝食の後はお金稼ぎ。

 タイトル画面からボタン連打でログインしようとしたが入れなかった。

 昨日入ったZサーバーは満杯になっていた。

 どうしてと疑問に思っても答えは自分の中にありそうもないので、またカーソルをひとつ上にずらしてYサーバーへログインした。


≪称号 カニジェノサイダー を獲得しました≫

≪蟹甲殻類大腿部歩脚身取出器具を獲得しました≫

≪レベルアップ アヤメはLv57になりました≫

≪発見者報酬 ゴールドカード4を獲得しました≫

≪ゴールドカードはトレード、オークション出品不可アイテムです≫


 ログインしたらレベルアップが上がっていたんですけれど……。

 もしかしてこのゲームちょろい?

 ゴールドカードを持っていると毒が無効になるようで何で?

 カードのアイコンをよく見るとカードには穴が7個空いているようだ。

 だけれどアイコンが小さすぎてよく分からない。

 貰えるものなら貰っていた方がいいだろう。

 漢字いっぱいの名前の武器はレベルが足りなくて装備出来なかった。


 考えても調べてもゲーム内の時計の針は進むのでそれらは後回し。

 仕事を終えたら終えたらで、ゲーム関連の事はしないだろうけれど。

 スティックを動かして昨日と同じように、道なりに沿って進んで行く。

 橋の下には3体ほどレベル1のカニがいたが、倒しても昨日のように湧いたりはしなかった。

 青空の下、平原の景色がいいなと思いながら進んでいると、オランダのキンデルダイクのような風車群に出くわした。

 違う点は潟ではないこと。

 ほぼほぼほとんどの風車が排水用ではないが、80年前くらいのこの国では普通に使われていたのでまあ。

 ギリシャから日本に送られた風車は肉眼で一度でもいいから見てみたい。

 揚水か粉ひきか。

 消去法でどちらかの風車たちをながめながら流れるままに移動していると、一番奥の風車の前に金色の羊がいた。


 学生の頃聞いた事がある。金色のモンスターは経験値よりもお金を落とすと。

 ならば狩るしかない。

 羊にそのまま近づいても羊はこちらに気が付いてないのか逃げ出さない。

 なんて馬鹿な羊なんだろう。

 明日のステーキの代金となれ、と思いながらレベルが書かれていない金色の羊を切り裂くと、緑色の触手が分身を貫いた。

 そして画面は暗転から昨日も見た再ログイン画面へ。

 このゲーム初心者に厳しすぎない?

 ただこのまま感情にしたがってゲームを止めたら今日の給料は2800円だ。

 顔を洗って水を飲むと丁度分身が復活した。

 閑古鳥が鳴いていた昨日のサーバーと違ってここはもう少しプレイヤーがいるみたいだ。

 復活した私の隣には、今にも宇宙を燃やしそうで闇に潜む魔物を狩る生業をしていそうな金色の鎧を身に纏ったプレイヤーがいた。

 頭の上にはシズクの三文字。

 ああ、私と同じタイプっぽい。レベル以外は。

 レベルは682と高レベル。

 このゲーム、レベルの上限いくつなんだろう。

 999であってほしいと思うけれど、でっけえカニは1000だったので9999までありそうだ。

「あのザラタンって知ってます?」

 そうオープン? チャットで話しかけられた。

「いえ知らないです」

 そう、情報社会の時間での経験値くらいしかないタイピング技術でゆっくりと打ち込んだ。

 その後、自然にフェードアウトしたつもりで道なりに沿ってダッシュした。

 人間火事場になれば、結構技術が身に着くもので偶々強くボタンを握り込んだ右中指のおかげで走ることに成功した。


 橋を越えて草原を抜け、風車群の場に到着しても後ろから金ぴかの鎧は追いかけてきていた。

 レベル差があっても、鎧が重いせいか分身が、防具を付けていない為軽いせいか奇跡的に距離は縮まっていなかった。伸びてもいないけれども。

 このまま真っ直ぐ進むとまた金の羊の餌食に餌食になるだろう。

 ただそうやって死んでも先回りされそう。

 なのでコントローラーのスティックを左に傾ける。

 すると分身は小さなトンネルを通り越した後、崖から海へとダイブした。

 分身は落下の衝撃で体力ゲージが半分削れた。

 そのまま大陸に分身の視線を向けて泳いでいると、金ぴか鎧も海へとダイブした。

 そしてそのまま海へと沈んで行った。


 なんか残り就業時間また陸地で鬼ごっこは嫌なので、泳ぎを続行。

 一時間程分身が泳いでも、モンスターどころか魚一匹に出くわさなかった。

 そして辿り着いた島は、プレート型や十字型の墓石溢れる霊園だった。

 ひとつだけ教会があったが、それ以外の住居は見当たらなかった。



アヤメのレポート3日目

1:目的

  お金稼ぎ

2:結果

  金色の羊を攻撃したら緑色の触手に貫かれて死んだ

  なぜかしら追いかけてきた鎧のプレイヤーは海で溺れて死んだ

3:考察

  羊にレベルがついていなかったので詳しく調べるべきだったと思う

  鎧のプレイヤーが追いかけてきたのはザラタンと関係があると思われる

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