きみを想えば
きみを想えば、言の葉は 枯れたる幹に蘖の
青き枝葉を伸ばすごと いまを過去より紡ぎだす
きみを想えば、秋の葉の 枝を離れても彩を
深むるごとき心地して なおさら、きみに染まりゆく
きみを想えば、秋月の 雲の帳をゆくごとく
瞼の奥の面影の ただ、もどかしく偲ばるる
きみを想えば、秋霜の 枯れたる草を飾るごと
枯れたる我のこころにも 光を受くるもののある
きみを想えば、木犀の 姿もみせず香るごと
遠き彼方にありて、なお 我、まだ、きみを忘るまじ
きみを想えば、秋草に あまたの虫の鳴くごとく
我も、こころにきみを泣き 今宵も月と一人ゆく