何でも大臣の新任務(3/4)
「物資? そんなものはエーテル王国に来れば、いくらでもあるぞ」
着替えすらない状況に頭を悩ませるエレズに対し、キュアノスはいとも簡単にそんなことを言ってみせた。
「エーテル王国って、キュアノスの出身地の? 確かにあの国は大国だから、何でもあるだろうけどさ……」
「そのとおり。ないものなんかないぞ! ……あっ、そうだ。実は近々、エーテル王国のとある町で、祭りが開かれることになっていてな」
キュアノスはいいことを思いついたとばかりに、テーブルの上に置いてあったラティーナのスケッチブックから、濡れていない紙を一枚取った。
先ほど自分が騒動を起こしたことなどすっかり忘れているようなその表情に、エレズは怒る気にもなれなかった。
「都合良く、こんなところに祭りの招待券もあるのだ」
キュアノスがスケッチブックに走り書きして作った即席の招待券には、『キュアノスの友だちご一行、お祭り招待券』という文字が躍っている。横に描いてあるイラストは、たった今決まったばかりのラエゴブ王国の国旗だ。
「祭りを目一杯楽しんで、欲しい物資を好きなだけ持って行くといい。私が許可する」
「わあ! お祭り!」
『祭り』という言葉を聞いて、ちょっとした失敗をしてしまって少し落ち込んでいたラティーナは、気分がよくなったように目を輝かせた。
「いいわね。行きましょうよ、エレズ。エーテル王国までは、私が乗せていってあげるから。途中でどこかに一泊すれば着くわ」
「何言ってるんですか。こんな作りかけの状態で、国を放置するわけにいかないでしょう」
「だって、物資が必要なんでしょう?」
エレズは反対したが、ラティーナは粘った。
「ここにいたって、必要なものが空から降ってくるわけでもないし、だったら、自分たちの足で探しに行く必要があるじゃない」
「それはそうですけど……。でも、こっちには元手が何もないんですよ」
魔界の経済は物々交換で成り立っている。確かにエーテル王国には物資が山のようにあるかもしれないが、今建国されたばかりのラエゴブ王国には、それと交換してもらえるだけの貴重な資源など、何もないのだ。
「そんなことは気にしなくても、私が許可すると言っているのに」
元手がない、というエレズの台詞に、キュアノスが不満そうな顔になる。
そんな許可を勝手に出せるなんて、お前は一体何様なんだとエレズは突っ込みたくなった。
「うーん……そうだな。じゃあ、こういうのはどうだ?」
どうしてもエレズたちを祭りに招待したいのか、キュアノスが別の提案をしてくる。
「この祭りの中のイベントの一つに、『武人コンテスト』があるのだ。エーテル王国で一番の武人を決める催しだ。優勝者には、豪華な賞品が出るんだぞ」
「えっ、それって……」
「なるほど! つまり私がそこで優勝して賞品をいただけば、それを元手に好きな物資を集め放題ってわけね!」
ラティーナが異常なくらい早い理解力を発揮した。一方のエレズは困惑してしまう。
「いや、でも『エーテル王国で一番の武人』っていうことは、エーテル王国の国民しか参加できないんじゃ……」
「細かいことは気にするな。楽しければそれでいいのだ」
キュアノスから、まさに魔物族といった返事が返ってくる。
だが、エレズには他に心配するべき事柄もあった。




