本当に惜しい(2/2)
「……二人とも、お疲れ様」
やっと落ち着いて話ができそうだ。キュアノスがどこかへ行っていたのは後で叱るとして、ルーシーは二人に微笑みかけた。
「これで私たちを脅かす敵はもういないわ」
「ああ、そうだな」
ルーシーに目で勧められた椅子に座りながら、エレズも安心したような顔になる。
「そう言えば宰相殿、水が引くのを待っている間に、爆発音のようなものが聞こえた気がしたんだが……」
「ええ。ちょっとした小細工をしておきました」
ルーシーが答えると、エレズが「さすがだな」と言った。
「別に大したことないわ。それよりもエレズ、本当にありがとう」
村にいたときから知っていたが、やっぱりエレズは優秀だ。それだけではなく、以前祭りの席で行った会談で、エーテル王国の現状を言い当てた観察眼を目の当たりにしたときから、ルーシーはずっと彼を評価していた。
まったく、エーテル王国の国民でないことが惜しい。本当に惜しい。
「……疲れたでしょう、エレズ。しばらくはエーテル王国でのんびりしていって。歓迎するから」
「ごめん、ルー。そうしたいのは山々なんだけど……」
うちの国民にすることは無理でも、しばらく留めることくらいならできるだろうかと思いながらルーシーは提案したが、あえなく却下された。
「ラティーナ様が俺の帰りを待ってるからさ。また今度ゆっくりと観光させてくれ。前にコンテストでもらった旅行券もあるし」
「そう……」
今回も勧誘は失敗だ。どうやら彼にとって、ラエゴブ王国はかなり魅力がある場所らしい。
(それとも、あの女王様が……?)
コンテストでエレズがラティーナに見とれていたのを、ルーシーは知っていた。
どうにも離れがたい相手というのはいるものだ。ルーシーは、鼻歌を歌いながら花瓶の花の花びらをむしっているキュアノスを横目で見ながら、わずかに苦笑した。
もうエレズをラエゴブ王国から引き離すのは無理というものなのだろう。
「きっとあの女王様も、エレズを心配してるわね。じゃあ、早く帰してあげる方がいいかしら?」
ルーシーは席を立った。
「まだ色々と戦後処理が残ってるけど、それはもう少し後で考えましょう。とりあえず、エレズの無事な顔だけでも見せてあげて」
「うん、ありがとう。ルー」
エレズも腰を上げた。
「また今度な」
「ええ」
ルーシーと握手をした後、エレズは部屋から出て行った。
「……さて、キュアノス様。今回の無断行動についてですけど……」
「あっ、そうだ! 何でも大臣の見送りに行かないとな!」
ルーシーが怖い顔になったのに気が付いて、キュアノスがわざとらしい大声を出しながら退出していった。
ルーシーは腕組みする。
(もう……本当に……)
情を移すならもっと違った相手にしておけばよかったと、ルーシーは何となくエレズがうらやましくなってしまった。




