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何でも大臣と女魔王様の建国記 ~人口の九割を従えている四天王を追放したせいで古巣は崩壊したみたいだけど、そんなことより俺は新しく建国した王国で魔王の娘と楽しく暮らします~  作者: 三羽高明
一章 何でも大臣と女魔王様、国を作る

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国民第二号、誕生(1/2)

 慣れない建国作業は思ったよりも色々なところで時間がかかり、時刻は、あっという間に昼過ぎになった。


 いくら働き者のゴブリンといえども、生き物である以上は、時々は休んだり、食事も取ったりしなければならない。


 エレズも空腹を感じていたし、そろそろ休憩の頃合いだろうと判断した。


 そんなことを考えていると、きゅうぅ、と小さな音が聞こえてきた。ラティーナがはっとしたような顔で、慌てた様子で腹を押さえている。


「……お腹、空いてます?」


 顔を赤くするラティーナに、エレズが問いかける。ラティーナは「え、ええ……」と気まずそうに頷いた。


「じゃあ、休みましょうか。俺ももう昼食の時間かなって思ってたんですよ。ゴブリンたちも休ませたいですし」


 ラティーナに恥ずかしい思いをさせないようにと、エレズは彼女の腹が鳴ってしまったのをあまり気にしないふうを装った。


「……食べるものならテントにあるわ。って言っても、調理しないといけないものばかりだけど」


「じゃあ、料理はゴブリンたちに任せましょう」


 リーヴ王国の魔王城の厨房もゴブリンたちの職場だったので、彼らは料理もお手の物だ。皆、「分かりました!」と元気よく頷いて、テントへと向かっていった。


 これでエレズとラティーナの食事の確保はできた。次は、ゴブリンたちの食べ物の用意だ。


「ラティーナ様、この辺に川があるって言ってましたね」

「ええ、あっちの方よ」


 ラティーナが森の向こうを指さす。


「じゃあ、ちょっと行ってきますね。桶は……テントにあったかな」


 植物性ゴブリンの食べ物は、水と日光だ。水に関しては魔法で出したものではなく、天然のものが好ましい。


「なら私はゴブリンたちの手伝いでもしてるわ」


 ラティーナもそう言って、火をおこそうとしているゴブリンたちに近づいていった。彼らと別れ、エレズは森の中に足を踏み入れる。


 ラティーナが言ったとおりに、川はすぐ近くに流れていた。テントの中にあった桶を持ったエレズは、その中を冷たい水でいっぱいにする。


(今は大した数がいないけど、ゴブリンが増えたらいちいち水を汲みに行くのは手間だな……)


 井戸か何かを掘った方がいいだろうかと考えながら、エレズは桶を片手にその場を立ち去ろうとした。


 その背に声がかかる。


「何をしているのだ?」


 さっきまで人の気配などなかったものだから、エレズは驚いて桶をひっくり返してしまった。服がびしょ濡れになる。エレズは眉をひそめながら、声のした方を振り返った。


「水浴びなら、服を脱いだ方がいいと思うぞ」


 川辺に背の高い青年が立っている。


 年は二十代前半――エレズと同じくらいだろうか。鮮やかな青の瞳と髪。黙って立っていれば儚げな印象を与えそうな美青年だが、今はその顔に好奇心たっぷりの笑みを浮かべている。


「水を汲もうとしただけだよ」


 一体どこから現れたんだろうと思いながらも、エレズはこぼしてしまった水をもう一度汲み直した。


「そっちこそ、こんなところで何を? この辺りに住んでるの?」


 先住民がいたのなら、国を作る前に許可がいるな、とエレズは考えていた。だが、相手は「私はエーテル王国出身だ」と言った。


「エーテル王国……ああ、精霊が治めてるっていう」

 

 エーテル王国は、北の方にある大国だ。魔王だけでなく、その国民もほとんどが精霊で占められている国家である。と言うことは、この青年も多分精霊だろう。


「じゃあ、俺は忙しいからこの辺で……」


 相手がこの辺りの住民ではないのなら問題はない。ゴブリンもお腹を空かせているだろうし、早く戻ろうと思ってエレズは踵を返した。


 だが、思ってもみなかったことに青年はその後ろをついてくる。


「……なんか用?」

「面白そうだからついていくのだ!」


 訳の分からないことを言いながら、青年はエレズの顔をまじまじとのぞき込む。そして「人間族の血が入っているんだな」と呟いた。


「お前たちはすぐに分かるぞ。片方の目が赤いからな」


 魔界における圧倒的マイノリティは、エレズのような者たち――つまり、魔物族と人間族の混血児だ。


 魔物族と人間族の間に子どもが生まれた場合、その子は必ずどちらか片方の目が赤くなる。エレズも左目は茶色だが、右目は夕日のように真っ赤な色をしていた。


「『混血』は、『スキル』とかいうものが使えるんだろう? お前は何ができるのだ?」


「何って言われても……」


 エレズは困惑した。確かに彼の言うとおり、『スキル』は、混血児のみが扱える特殊能力なのだが、普通の魔物族はそんなものには興味を持たないのだ。


 というのも、『スキル』は、総じて魔物族の目から見れば地味なものばかりだからである。そのことから、彼らは混血児を『力ない者』と判断している。


 それと同じ理由で、魔物族は魔法が使えない人間族を蔑んでいた。


「まあ、栽培とか、そういうのだよ」


 たった今会ったばかりの相手に自分の力を種明かしするのを警戒したエレズは、とっさにお茶を濁した。


「何だかよく分からないが面白そうだな。今度見せてくれ」


 青年は、エレズに誤魔化されたことなど気が付いてもいないらしい。呑気な提案をする青年を見て、エレズは不思議な気持ちになる。


(精霊は変わり者が多いって噂で聞いてたけど、本当だったんだ……)


 でなければ、混血児のエレズに興味など持つまい。世間は広いなとエレズは変なところで感心してしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお、新キャラと思ったら あ(;・∀・)…… エーテルって…… [気になる点] 絡みだしましたね……いろいろと運命が…… そんな気がします。 [一言] 何気ないシーンなのにあっと言う間…
2021/10/15 14:50 退会済み
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