対タロス王国同盟(3/3)
「この国に入れない……となると、ドミニク大渓谷の辺りで迎え撃つことになるのか?」
キュアノスが地図を見つめながら言う。エーテル王国とタロス王国の間には、ドミニク大渓谷と呼ばれる大きな谷が広がっているのだ。
エレズも地図の上に目を滑らせた。
「……この谷、すごく幅が広いんだよな。タロス王国軍の本隊が全部入るくらい……」
エレズは何気なく呟きながら、谷の周辺の地形を目で追った。ルーシーも、何やら考え深げな顔になっている。
「タロス王国からエーテル王国に来ようと思えば、必ずドミニク大渓谷を通らないといけないわ。迂回するとすごく遠回りになるから、あえてそうする理由がない限り、絶対にこの谷を通過するわね」
ルーシーは地図に描かれた谷をゆっくりと指で辿っていた。
その指が、谷の北のある一点で止まる。
「……これ、使えないかしら?」
エレズが顔を上げると、ルーシーと視線が合う。彼女はニヤリと笑った。
「ねえ、エレズ……。上手く事が運べば、相手を一網打尽にするのも可能だと思わない?」
「……無理だ。時期が悪い」
エレズはルーシーがどんな作戦を考えついたのか、一瞬で理解した。キュアノスは二人の会話についていけずにぼんやりしている。
「タロス王国軍は、今にも侵攻してくるかもしれない状況だ。俺たちに都合の良いときまでは待ってくれないだろ」
「もちろん、待ってもらわなくて結構よ」
ルーシーがクスクスと笑った。
「ねえエレズ。自分の国の民のこと、忘れてるの? 同じ部屋にいるっていうのに」
「同じ部屋……?」
エレズの視線が、反射的にラティーナとリーヴの方へと向いた。その途端、エレズはルーシーの言いたいことが分かった。
だが、この作戦は彼女たちの協力だけでは成り立たない。
「ゴブリンも使おう」
エレズは顎の下に手を当てる。
「土木工事なら、あいつらは慣れてるから丁度いい。……ルーのところに、貸し出せるような人員はいるか?」
「あんまり期待しないで」
ルーシーは何となく申し訳なさそうだった。
「なら、ゴブリンの数を増やすしかないな。どれくら必要なのか……。もっと詳細な地図か何かがいるな」
「二人とも、さっきから、一体何の話をしてるんだ?」
ついにキュアノスが不思議そうな声で尋ねてきた。エレズとルーシーは大胆に笑う。
「勝ち筋が見えたって話ですよ」
「ああ、そのとおり」
エレズは地図にまたしても目を落とす。
「この作戦が成功すれば、戦争はこっちの勝ちで決まりだ。エーテル王国の領土に、タロス王国軍を一歩も入れたりするもんか」




