対タロス王国同盟(2/3)
「もしかしてゴブリンを使っても、人手不足ってこと? 今じゃ、建国した時よりも、ゴブリンの数はずっと増えているけど……。でも、それでも手が足りないって言うのなら、もっと作ればいいんじゃかしら?」
確かにラティーナの言うとおりだった。エレズは国を作ってから毎日せっせと畑を耕し、『動物栽培』を繰り返していた。今後もそれは続けていく予定だ。
だが、頭数だけ増えても意味はないとエレズは思っていた。
「ラティーナ。向こうは戦慣れした集団……言ってみれば戦闘のプロだ」
エレズはラティーナに自分の考えを説明しようとしたが、それよりも早く口を開いたのはリーヴだった。
「それに引き換え、こちらの主な戦力は、作られたばかりのゴブリンだ。今から戦闘訓練を施してみても、敵が強すぎて焼け石……ということだろう。相手が少人数ならともかく、今回は大勢いるらしいからな」
リーヴはすっかり解説役が板についている。魔物族の中には大雑把なだけで頭は人間族並みに回る個体もいるのだが、どうやらリーヴもその類らしい。
「つまり、ゴブリンは頼れないのね」
ラティーナが思案顔になる。
「じゃあ……私たちの出番かしら?」
「えっ?」
「私とお父様が敵を蹴散らしてあげるわ! ね、お父様!」
「おお、いい案だな。久しぶりに腕が鳴る」
ラティーナの言葉に、リーヴはすっかり乗せられてしまっている。温厚そうに見えてやっぱり彼らも魔物族だと思いながら、「ちょっと待ってください!」とエレズは二人を止めた。
「たった二人で出て行っても、返り討ちに遭うだけですよ。また封印されたりしても知りませんよ」
「あれは封印じゃなくて、竜石化っていう現象よ」
ラティーナが心外そうに言った。
「竜人は力を使いすぎたり大怪我をしたりすると石になって、回復するまで眠りにつくの。……何で皆、『封印された』なんて勘違いしてるの? 他の種族は石になったりしないのかしら?」
「普通はな。ただ、トロールは日光に当たると石化するらしいぞ。影に行けば元に戻るが」
「ええっ、不便ね。私、竜人でよかったわ。でもこの角、時々とっても邪魔で……」
「で、宰相殿、どうするのだ? エーテル王国の自警団員は数が足りない、ゴブリンも当てにできない、竜人二名では力不足すぎる、となると、もう打つ手がないんじゃないか?」
完全に脱線した会話を続けるラティーナ親子を放って、キュアノスがルーシーに問いかける。
エレズも二人を連れてくるんじゃなかったかなと思いながら、こちらの話題の方が重要と見て、ルーシーたちの議論に参加することにした。
「手がないわけではありません」
キュアノスの後ろ向きな発言は正論そのもののように聞こえたが、ルーシーは静かに首を振った。
「例えば奇襲をかけるとか……。正面からぶつかるのは、こちらが圧倒的に不利ですから」
「ルーの言うとおりだな。籠城戦なんかやっても勝てる見込みもないし、俺もこっちから攻めるのがいいと思う」
エレズは壁の地図を剥がして、机の上に広げた。
「タロス王国軍がエーテル王国の領土に入ってくる前に倒すんだ。そうしないと、侵入してきた場所からめちゃくちゃに破壊されていくに決まってる」
タロス王国の凶暴性をエレズは身をもって経験している。キュアノスが、「何でも大臣も、相当奴らに恨みがあるんだな」と同情的な声を出した。




