ここ、どこですか?(2/4)
「な、何、あれ……!?」
翌日、そろそろラエゴブ王国が見えてくるだろうかというところまでやって来て、ラティーナが驚愕の声を上げた。
「どうしました?」
ラティーナの背中に寄りかかっていたエレズは、何事だろうと身を起こす。そして、ポカンと口を開けてしまった。
(あそこって……ラエゴブ王国がある位置だよな……!?)
遠目からでも異変が起きているのがよく分かる。エレズはじっと目をこらした。
石畳が続く大通りに、流れる小川や大きな広場。立ち並ぶ家々はどことなくおとぎ話に出てきそうな外観をしている。
ずっと遠くに見えているのは、魔王城だろうか。三階建てで、一番高い塔の上では、ラエゴブ王国の国旗が翻っていた。
その旗を見なければ、別の国に来てしまったのかと思うところだった。数十日ぶりに帰ってきた祖国は、エレズの想定を越える発展ぶりを見せていた。
「お帰りなさいませ!」
巨大な魔王城から少し離れたところで、ゴブリンたちが旗を振りながら、ラティーナの着地誘導をしていた。
内心、まだラエゴブ王国の変貌を信じられなかったエレズは、緑の皮膚をした植物性ゴブリンを見て、やっとここが自分とラティーナが建国した国家なのだという確信を得ることができた。
「ええと……これは一体……? 何でこんなに国が様変わりしてるんだ?」
ラティーナの背中から降りたエレズは、ゴブリンたちに問う。
留守を預かってくれていたゴブリンたちへの感謝の言葉は事前に色々と考えてあったのに、予想外の事態が起こったため、そんな台詞を口にする余裕はなかった。
「はい、エレズ様の計画表のとおりにいたしました!」
エレズの困惑を余所に、ゴブリンは胸を張って答える。
「俺、ここまでやれって言ったっけ……」
エレズが計画表の内容を思い出すように首をひねっていると、人型に戻ったラティーナが意味深に「あっ……」と声を上げた。
「どうしたんです? 何か思い当たることでも?」
「えっと……そうね」
ラティーナは困ったような笑い顔になっていた。
「すっかり忘れてたんだけど、私、出かける前にエレズが作った計画表に、色々と書き足したのよ。『魔王城をもっと豪華にして』とか『家をたくさん建てて』とか。ちょっとした悪ふざけのつもりだったんだけど……」
「ゴブリンはそれを真に受けてしまった、と」
驚いたことに、全てはラティーナの冗談から始まったことらしい。
ラティーナの口調から察するに、どう考えても短期間で解決できない事柄も含まれていただろうに、それをどうにかしてしまった辺り、ゴブリンたちの勤勉さは異常とも言える。
だが、当のゴブリンは主人の命令を忠実に実行しただけだと思い込んでおり、ラティーナの話を聞いてもきょとんとしていた。




